2002 年 9 巻 3 号 p. 227-230
食道癌術後に急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)を発症した68歳の男性に対し,Meduriらの報告に基づいてメチルプレドニゾロン(methylprednisolone,MP)を少量,長期投与した症例を経験した。食道癌術後,患者の呼吸状態は悪化していき,術後19日目には動脈血ガス所見でpH7.30,PaO2 68mmHg,PaCO2 93mmHg〔〔FIO2 0.95,PEEP 10cmH2O,圧制御換気(pressure control ventilation, PCV) 15 cmH2O〕となった。肺胞洗浄を2回行い,細菌性肺炎を否定した後にMPの投与を開始した。動脈血ガス所見は徐々に改善し,長時間を必要としたものの人工呼吸器からの離脱に成功した。本症例の経過が自然治癒かMPの効果は判定しがたいが,経過から考えて人工呼吸器からの離脱にMPは有効であったと推察される。症例を選べば長期ステロイド少量投与は晩期ARDSに有用であり,人工呼吸器からの離脱を促す可能性がある。