抄録
薬物療法に固執することなく,体外式循環補助装置(extracorporeal life support, ECLS)を導入し救命し得た小児の劇症型心筋炎を経験した。症例は5歳の男児で,感冒様症状から急激に心不全に陥った。経胸壁心エコーを行ったところ左室の収縮力はびまん性に低下しており,心筋炎による心原性ショックと診断した。人工呼吸を開始し,利尿薬などで治療を試みるも,循環動態は改善せず,代謝性アシドーシスは進行した。この時点で,致死的不整脈を誘発する可能性のあるカテコラミンの使用を試みることなく,ECLSの導入を決定した。ECLS開始直後より循環動態は改善し,48時間後にはECLSを離脱し得た。40日後,軽度の拡張障害を残すものの,独歩で退院となった。急激な経過をたどる小児の劇症型心筋炎では,薬物療法の有効性の早期判定を含め,治療開始時よりECLSの導入を常に念頭に置いた管理が必要であると考えられた。