日本集中治療医学会雑誌
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低体温療法を併用して治療したエンテロウイルス脳幹脳炎の1救命例
松崎 由美子立石 彰男伊住 浩史副島 由行國廣 充瀬口 雅人福本 陽平古川 漸
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2002 年 9 巻 3 号 p. 235-240

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抄録

エンテロウイルス(EV)は手足口病の原因ウイルスであるが,まれに致死的な中枢神経系障害を合併する。今回EV71による急性脳幹脳炎の小児の1例を経験した。患者は3歳,男児。発熱,腹痛,嘔吐が数日間続いた後,意識障害(JCS300)が出現した。入室時MRI検査では,T2強調画像で脳幹部に高信号域を認めた。人工呼吸管理としグリセロール,γ-グロブリンを投与したが,第2病日に突然,ショックと肺水腫をきたし,同時にびまん性脳浮腫が進行,脳波は徐波化した。ステロイド療法と軽度低体温療法(3日間,食道温34~35℃)を併用したところ,脳浮腫は徐々に改善した。さらにその後,thyrotropin releasing hormone (TRH)投与開始後より意識レベルも改善し(JCS20),第46病日一般病棟に転棟した。EV71脳幹脳炎では,厳密な呼吸循環管理と炎症による二次的脳損傷の抑制が重要である。軽度低体温療法には,興奮性神経毒性やサイトカイン機序による二次的脳損傷の抑制効果が期待できる。

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