情報通信学会誌
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論文
憲法35 条1 項に基づく権利の保障と令状主義の要請との関係
海野 敦史
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2020 年 38 巻 3 号 p. 39-50

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抄録

憲法35 条1 項が要請する住居不侵入等確保権及び私的領域不侵入確保権の保障をプライバシー等に対する実体的権利の保障と解することは合理的であるが、その場合、あらゆる公権力の行使に令状手続が要求されるのかという問題が残る。しかし、同条項に基づく令状主義の要請は、基本権又は基本権法益に対する本質的な制約となる捜索等の行為に向けられており、語義としての「侵入、捜索及び押収」の類型に属する行為であっても、制約の度合いが比較的軽微な行為である捜索等近似行為に対しては及ばない。これに対し、住居不侵入等確保権等の保障が及ぶ射程については、プライバシー等の侵害の可能性にかんがみ、捜索等に厳密に限られるわけではなく、捜索等近似行為にも及ぶ。一方、令状主義の要請は、捜索等を正当化する要素の中心を占めるものの、当該要素は憲法上必ずしも令状主義のみに収斂するわけではなく、令状手続とは別の合理的な手続が法律上設定されることも予定されている。特に、非刑事手続においては、捜索等の行政目的が特定されていることや、対象者が自ら適切な範囲に捜索等の実施を調整する余地が残されているため、令状主義を絶対視する必要性は乏しい。したがって、住居不侵入等確保権等の保障と令状主義の適用範囲とは、常に連動するわけではなく、少なくとも捜索等近似行為の実施に際して切断される。それに加え、捜索等の実施に際しても、憲法13 条に基づく「公共の福祉」の確保の必要性に照らし、令状主義が例外的に切り離される可能性を残している。

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