2021 年 39 巻 2 号 p. 71-82
日本政府の電子行政オープンデータ戦略では、1)行政の透明性・信頼性の向上、2)市民参加・官民協働の推進、3)経済の活性化・行政の効率化など複眼的な目的が掲げられている。もっとも、地方自治体における保有データ公開の進展はみられるものの、それ以外の取り組みに関する議論の深まりは十分ではない。本論では、地方自治体のオープンデータ施策について、1)保有データの公開のみならず、2)官民連携・協働、3)庁内におけるデータ利活用(行政の効率化)も含む複眼的な視点から実態の把握を試みた。そして、自治体間の進展度合いの差異をもたらす要因について、人口規模ならびに保有データの公開開始時期(官民データ活用推進基本法の施行前後)に着眼して分析を行った。その結果、政府の施策は中・小規模自治体の保有データ公開の推進に一定の効果をもたらしている可能性が推察された。一方、取り組みのさらなる深化・充実に向けては、シビックテックなど外部の人材や組織との協力関係の重要性が示唆された。