情報通信学会誌
Online ISSN : 2186-3083
Print ISSN : 0289-4513
ISSN-L : 0289-4513
論文
東アジアにおける高度人材の国際労働移動の誘因分析
─1980 年代から2000 年代の韓国人IT 人材の日本への移動を中心に─
松下 奈美子
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 39 巻 2 号 p. 59-70

詳細
抄録

2000 年代に日本で就労する外国人IT 人材の数は大幅に増加した。中でも、中国、韓国からのIT 人材の増加が顕著であった。東アジアから日本への外国人IT 人材の国際労働移動の誘因は何だったのか。本稿では、政府が自国の若年層をIT 人材として育成し、日本へ積極的に送り出していた韓国に焦点を当て考察を行った。韓国の高い大学進学率により大卒人材が労働市場で供給過多だったところにIMF 通貨危機が重なり、若年失業率の急激な悪化が誘因の一つであった。1980年代に日本の情報通信産業がオフショア相手国を探していた際の候補の1 つが韓国だった。日本企業との業務、技術提携は、日韓の情報通信産業の間に水路を形成し、その後の移動促進機能を果たした。その後、韓国政府は日本政府と日韓IT イニシアティブを結び、若年失業者対策として海外就労支援政策を推進した。2000 年代の外国人IT 人材の拡大の背景には、日本側の受け入れ政策という要因に加え、韓国側の要因もあった。

著者関連情報
© 2021 情報通信学会
前の記事 次の記事
feedback
Top