情報通信学会誌
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39 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論文
  • ─保護と利活用をともに実現するための提案─
    田中 辰雄
    2021 年39 巻2 号 p. 27-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    本稿では個人情報の保護と利活用をともに進めるためのひとつの制度の提案をおこなう。個人情報については保護を強めたいという人と利活用を進めたいという人がおり、双方ともに最適な状態になっていない。保護を強めたい人は現在利用可能なオプションを行使しておらず、利活用を求める人はその意図を企業に伝えられてない。これは保護と利活用についての同意を得る費用が高いためと考えられる。この費用は一種の取引費用であり、これを下げる制度的工夫として保護利活用の同意を仲介する機構を考える。機構は消費者にアプリを提供し、保護利活用を5 段階程度に縮約して集中処理することで取引費用を下げる。この機構がどれくらい国民に受け入れられるか見るためにコンジョイント分析を行うと、5 割から6 割程度の人が利用意向を示しており、国民に受け入れられる可能性は十分にあるだろう。

  • ─ AI を活用した「誘い出し防止アプリ」への寄付意思額─
    田中 大智, 高口 鉄平, 実積 寿也
    2021 年39 巻2 号 p. 45-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    近年わが国では、SNS を介した未成年者のネット被害が増加傾向にあり、被害を防止する情報システムの提供が行われているが、これらの対策は価値財の性質を有しており、外部性等により市場メカニズムだけでは社会的に望ましい供給を実現できない可能性がある。そこで本研究では、取引関係のない受益者からの収入確保に着目し、個人の「寄付」による社会負担の可能性を分析した。具体的には、Web アンケート調査を元に、人工知能を活用した架空の「誘い出し防止アプリ」に対する寄付意思額(WTD:Willingness to Donate)の推計と分析を行った。その結果、平均的なWTD は有意に正であることが判明した。また、寄付者の選好にはバラつきが大きいことや、好ましい寄付の条件や手法には海外の先行研究と異なる点があることが判明した。これらの調査結果は、寄付を募る際には日本でもセグメンテーションやターゲティングが重要である一方、海外と同じやり方は通用しないことを示唆している。なお、本研究は有効回答率(60.5%)に課題があり、信頼性を高めた調査によるさらなる分析が必要である。

  • ─1980 年代から2000 年代の韓国人IT 人材の日本への移動を中心に─
    松下 奈美子
    2021 年39 巻2 号 p. 59-70
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    2000 年代に日本で就労する外国人IT 人材の数は大幅に増加した。中でも、中国、韓国からのIT 人材の増加が顕著であった。東アジアから日本への外国人IT 人材の国際労働移動の誘因は何だったのか。本稿では、政府が自国の若年層をIT 人材として育成し、日本へ積極的に送り出していた韓国に焦点を当て考察を行った。韓国の高い大学進学率により大卒人材が労働市場で供給過多だったところにIMF 通貨危機が重なり、若年失業率の急激な悪化が誘因の一つであった。1980年代に日本の情報通信産業がオフショア相手国を探していた際の候補の1 つが韓国だった。日本企業との業務、技術提携は、日韓の情報通信産業の間に水路を形成し、その後の移動促進機能を果たした。その後、韓国政府は日本政府と日韓IT イニシアティブを結び、若年失業者対策として海外就労支援政策を推進した。2000 年代の外国人IT 人材の拡大の背景には、日本側の受け入れ政策という要因に加え、韓国側の要因もあった。

  • 野村 敦子, 川島 宏一, 有田 智一
    2021 年39 巻2 号 p. 71-82
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    日本政府の電子行政オープンデータ戦略では、1)行政の透明性・信頼性の向上、2)市民参加・官民協働の推進、3)経済の活性化・行政の効率化など複眼的な目的が掲げられている。もっとも、地方自治体における保有データ公開の進展はみられるものの、それ以外の取り組みに関する議論の深まりは十分ではない。本論では、地方自治体のオープンデータ施策について、1)保有データの公開のみならず、2)官民連携・協働、3)庁内におけるデータ利活用(行政の効率化)も含む複眼的な視点から実態の把握を試みた。そして、自治体間の進展度合いの差異をもたらす要因について、人口規模ならびに保有データの公開開始時期(官民データ活用推進基本法の施行前後)に着眼して分析を行った。その結果、政府の施策は中・小規模自治体の保有データ公開の推進に一定の効果をもたらしている可能性が推察された。一方、取り組みのさらなる深化・充実に向けては、シビックテックなど外部の人材や組織との協力関係の重要性が示唆された。

論説
  • 上田 祥二, 松井 亮治, 針尾 大嗣
    2021 年39 巻2 号 p. 83-90
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    プレイステーション5 の購入者の転売活動を把握するために、発売日から12 月末までおよそ1 ヵ月半のヤフオクの落札に関する情報を収集し、取引に関するデータの分析を行った。発売日当日から4 日間の取引数が多い結果であり、1 日に600 件規模の取引が確認できた。出品者の取引回数を整理すると、取引頻度が1 回または2 回の出品者が全体の87% を占めているおり、オークションによる転売活動の大部分は取引頻度が1~2 回の出品者によるものであった。出品者の取引回数別にユーザをグループ化しプロファイルの具体化を行ったところ、「実店舗のWeb 販売」、「個人中上級取引者」、「個人初級取引者」の3 種類に分類できた。

寄稿論文
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