2022 年 40 巻 3 号 p. 13-24
日本主導でアジアのITスキル標準化を進め、IT人材の国際移動を促進しようとしてから20年が経過した。1980年代以降、IT人材の量的、質的な不足が叫ばれ、日本政府は積極的な外国人IT人材の受け入れを進めてきた。IT資格試験相互認証制度はアジアでIT人材育成とIT人材の移動促進を目的とした制度であったが、特に日本国内における認知度や活用度は低水準にとどまっている。背景には、日本型(メンバーシップ型)雇用と呼ばれる制度があった。職に対して適切な人を充当するのではなく、人に対し適性のある職を充当する仕組みの下では、高いスキルや資格よりも、日本人と同等の意思疎通が図れるか、自社に相応しい人物かという評価基準で採用が行われてきたため、外国人を採用する際に、有資格者である、高いスキルを持つ人物であることは、採用企業にとって重視すべき点ではなかった。その結果IT資格試験相互認証制度の認知度、活用度が低い水準にとどまっていた。