TPP協定で盛り込まれたデータフリーフローなどのデータ流通ルールを日中間で採用の是非が通商交渉で議論されてきている。データの流通円滑化のため、日本の産業界からは内外での採用が望まれる一方、中国は、国家安全保障を優先させる考え方からその採用に慎重な姿勢を見せている。ゲーム理論によりモデルを設定すると、ルールの限定的な採用が予想されることになるところ、実際に、2020年に両国が署名したRCEPでは、安全保障に関する留保を特記した形でルールが採用された。中国は2021年9月にCPTPP協定への加入を求めると発表した。上記のモデルからは、TPP協定の現行ルールをそのまま中国で適用する形での日中間の合意は短期的には期待しにくい。TPP協定のルールを推進する日本では、中長期的な視野に立ち、TPP協定加入国の拡大などでデータ流通圏を拡大し、ルールの効用を増進させ、どの国にとっても経済的にデータ流通ルールが大きな効用となる環境を醸成していく必要がある。
日本主導でアジアのITスキル標準化を進め、IT人材の国際移動を促進しようとしてから20年が経過した。1980年代以降、IT人材の量的、質的な不足が叫ばれ、日本政府は積極的な外国人IT人材の受け入れを進めてきた。IT資格試験相互認証制度はアジアでIT人材育成とIT人材の移動促進を目的とした制度であったが、特に日本国内における認知度や活用度は低水準にとどまっている。背景には、日本型(メンバーシップ型)雇用と呼ばれる制度があった。職に対して適切な人を充当するのではなく、人に対し適性のある職を充当する仕組みの下では、高いスキルや資格よりも、日本人と同等の意思疎通が図れるか、自社に相応しい人物かという評価基準で採用が行われてきたため、外国人を採用する際に、有資格者である、高いスキルを持つ人物であることは、採用企業にとって重視すべき点ではなかった。その結果IT資格試験相互認証制度の認知度、活用度が低い水準にとどまっていた。
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