抄録
圃場整備に伴いコンクリート化された水路において,転落後に脱出できずに死亡したカエルが頻繁に観察される.本研究では,コンクリート化の影響を受けやすいとされるトウキョウダルマガエルについて,水路への転落時の行動特性並びに脱出しやすいスロープの傾斜角及び水理条件(水深・流速)を明らかにした.本種が容易に登れるスロープ傾斜角は30°以下と考えられた.また,水深・流速が小さく個体が自由に移動できる時にはスロープに到達した個体は少なかったが,後脚が水路底に届かない水深または流速が大きい時には個体が定位しにくく,スロープへの到達・脱出が促された.一方,本種の流れに対する遊泳能力は低かったことから,流速ではなく水深を調整して定位しにくい条件にするとともに,対策工周辺では流速を極力小さくする必要がある.