岩手県奥州市胆沢区で展開された国営圃場整備事業の受益地区では,かんがいの用途を終えた16ヶ所のため池が環境保全の目的で保存されている.このような目的で保存されるため池を管理するためには従来のかんがい施設としての水収支や,それと不可分の関係にある熱収支の実態を事前に把握することが重要と考えられる.本研究では保全された,ため池の1つである朴の木ため池を対象として,周辺の圃場整備が実施される前年の2006年の5月から10月にかけて水文気象観測を行った.観測結果に基づいて朴の木ため池の熱収支と水収支の実態を明らかにするとともに,ため池の水温環境の形成は多量の流入水によって特徴づけられることが示唆された.