抄録
水田地域における魚類生態系を保全するために考案されている「排水路堰上げ型魚道」が整備された水田において,魚類生息状況と水収支を調査し,従来の用排水量諸元に基づいて考察を行った.魚道設置水田においては,魚類の遡上機会の増大を意図して,降雨時に速やかに落水口からの越流が生じるように,また遡上した魚類が田内で生息できるように,湛水深を従来よりも深く,落水口堰板高さに維持しようとする天端管理が行われた.そのために魚道設置水田の取水量と排水量は慣行水田に比べて多くなり,とくに排水量が増加することがわかった.排水量の増加には,無効降雨だけではなく,栽培管理用水が大きく寄与することが明らかになった.魚類生態系保全型の水田水管理のあり方を構築するためには,「魚道管理用水」や「魚類保全有効降雨」といった新たな概念の導入が必要であると考えられる.