抄録
農業水利施設の大半を管理する土地改良区は,混住化,農業者の減少・高齢化等でその管理能力が低下する中で,住宅地の排水等農地以外への対応が求められ,農村の9割を占める非農業者が参加する新たな仕組みの検討が課題である.このため,農業者に特化した土地改良区制度において,非農地に受益の費用負担を求める特定受益者賦課に焦点をあて,これまで管理中の土地改良区で導入事例がないという困難性とそれに内在する課題を指摘した.その上で,2009年に本賦課が導入された河北潟干拓土地改良区で,その課題の解決策と実現に至った手法等を解析し,意思決定の5ステップ・モデルの提案など多様な主体の参加と特定受益者賦課のあり方を考察した.