抄録
畑地灌漑事業の適切な評価に必要な検討資料を得るため,岩手県奥中山高原の牧草畑を事例として,タンクモデル法を用いて過去33年間(1978~2010年)の4~9月における表層40cmの土壌水分量の経年変化と旱害発生頻度の推定を行った.その結果,土壌水分量の経年変化として,制限土層で成長阻害水分点を下回る土壌水分量の低下は,そのほとんどが1978~1999年に発生していたことが分かった.旱害発生の頻度については,地域的に被害を顕在化させたような比較的規模の大きな旱害は,制限土層の水分量が成長阻害水分点を8日以上連続して下回る場合に発生し,33年間で6ヶ年の頻度で発生していたことが示された.ただし旱害の発生があった時期は偏って分布しており,なかでも被害の大きな旱害は全て1978~1999年に発生しており,2000年以降の11年間では発生していないことが分かった.