抄録
本研究では,台湾における農用地土壌汚染の社会的背景と,汚染及び汚染拡大の分布特性を明らかにすると共に,汚染対策の課題を日本の農用地土壌汚染対策の取組との対比により明らかにした.台湾の農用地土壌汚染は都市計画農業区やその周辺地域に多く,農村地域にある違法操業を含む工場排水の農業用排水路への放流が主因である.台湾の農用地土壌汚染対策による汚染の除去は対症療法的であり,工場排水への対策や未処理の底質による汚染の拡散や蓄積の防止を考慮した対策は取られない.本稿では,このような事態への対応方策として,①現在の点的な対症療法的対策から日本の農用地土壌汚染対策のような面的かつ抜本的な対策への改善,②工場の立地規制や排水基準の見直し,違法操業の取り締まり,③都市計画区域外の農業区については圃場整備事業等を契機とした土地利用の整序,を提案した.