抄録
多くの取水堰において可動堰ゲート直下周辺に堆砂が常態化し,管理上の大きな支障となっている.堰管理者は,ゲート操作による堆砂フラッシュを試みるが,ゲート閉鎖の可否が分かれる.ゲートフラッシュの実態とゲート閉鎖の可否を分ける条件について,実験水路において現地における特徴的なパターンを再現し,水理実験によって検討した.フラッシュ時の流量,土砂の粒径,ゲート上下流での水位差をパラメータとして,フラッシュの進行に伴う砂床形状の変形過程とその相違,さらにフラッシュ可能の限界条件を詳細に検討した結果,(1)流量が大きい場合においては,他のどの要因にも関わらず堆砂フラッシュがなされること,(2)下流水位が高い場合においては,ゲート下流側に砂礫が山のように堆積し,砂が大きく巻き上げられることでゲート下流において砂が循環し,フラッシュの可否に影響を及ぼすこと,(3)堆砂分布に偏りがあるとき,流量が少ない場合には,流量の大半が堆砂のない断面を通過してしまうために,フラッシュがより難しくなること,(4)堆砂フラッシュが可能な範囲はゲート周辺の狭い区間に限定されることが示された.