農業農村工学会論文集
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82 巻, 2 号
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研究論文
  • 瀧本 裕士, 丸山 利輔, 立田 真文, 能登 史和, 吉田 匡
    2014 年 82 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究では富山県の産業遺産である螺旋水車を取り上げ,水理実験を通じて発電用螺旋水車の動力特性を一事例において明らかにした.螺旋水車は勾配が約25°の水路に螺旋水車を水路床と平行に設置した時に最も効率よく稼働することがわかった.螺旋水車に増速機と発電機を取り付け,現場での開水路を利用した実証試験を行い,マイクロ水力発電の可能性についても検討した.実物の1/2モデルの螺旋水車でも300W程度の発電ができることから,補助電源としても活用できる.また農業用水路の落差工にも適用できる発電用螺旋水車の試作を重ね,発電効率を高める工夫をした結果,効率が70%に近い発電用螺旋水車を開発することができた.
  • 濱上 邦彦, 三輪 弌
    2014 年 82 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    多くの取水堰において可動堰ゲート直下周辺に堆砂が常態化し,管理上の大きな支障となっている.堰管理者は,ゲート操作による堆砂フラッシュを試みるが,ゲート閉鎖の可否が分かれる.ゲートフラッシュの実態とゲート閉鎖の可否を分ける条件について,実験水路において現地における特徴的なパターンを再現し,水理実験によって検討した.フラッシュ時の流量,土砂の粒径,ゲート上下流での水位差をパラメータとして,フラッシュの進行に伴う砂床形状の変形過程とその相違,さらにフラッシュ可能の限界条件を詳細に検討した結果,(1)流量が大きい場合においては,他のどの要因にも関わらず堆砂フラッシュがなされること,(2)下流水位が高い場合においては,ゲート下流側に砂礫が山のように堆積し,砂が大きく巻き上げられることでゲート下流において砂が循環し,フラッシュの可否に影響を及ぼすこと,(3)堆砂分布に偏りがあるとき,流量が少ない場合には,流量の大半が堆砂のない断面を通過してしまうために,フラッシュがより難しくなること,(4)堆砂フラッシュが可能な範囲はゲート周辺の狭い区間に限定されることが示された.
  • ― 沖縄,安里地すべりの事例調査 ―
    木村 匠, 中村 真也
    2014 年 82 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    沖縄,島尻層群泥岩分布地域で発生した安里地すべりの再発防止工事について,二酸化炭素排出量原単位を活用して二酸化炭素排出量を算出し,地すべり再発防止工事における排出量の状況を明らかにした.建設機械運転,建設機械製造および資材製造過程におけるそれぞれの二酸化炭素排出量は,資材製造が全排出量の約65%と最も高く,その中ではポルトランドセメントおよび高炉製熱間圧延鋼が90%以上を占めた.機械運転による排出量の中では,バックホウ,ダンプトラックおよび空気圧縮機の合計が約65%であった.工法別の排出量では,法面工が50%以上を占め,杭工,土工が続いた.本研究で資材製造に関する二酸化炭素排出量が多いという結果が得られたことから,地すべり再発防止工事における二酸化炭素排出量削減を考える場合,まずは資材量減に活路を見出せる可能性がある.
  • 古檜山 雅之, 中村 和正, 鵜木 啓二, 石田 哲也
    2014 年 82 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    地下灌漑が可能な大区画水田における水利用実態の把握と用水量解明のため,圃場地下水位などの現地観測を行い,初期灌水時に地下灌漑を行った場合の用水供給経路,生育期別の用水量,取水1回ごとの取水時間帯と取水強度などを明らかにした.初期灌水時に地下灌漑を行うと,用水は,暗渠埋戻し部の地下水位を速やかに上昇させ,作土層まで上昇したのち水平方向に広がる.それゆえ大区画水田であっても,圃場全体へ時間的にほぼ一様な給水が可能となる.直播栽培では,初期入水と生育初期における浅水管理時の取水が1回当たりの取水量として大きな値を示した.5月中旬から下旬にかけての時期に,移植栽培における代かき取水と直播栽培における初期入水もしくは浅水管理の取水が同時期に行われると,地域の用水需要の大きなピークの一つを形成する可能性がある.
  • ― 幹線用水路施設を対象としたリスクマネジメント ―
    大久保 天, 本村 由紀央, 中村 和正, 小野寺 康浩
    2014 年 82 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    農業水利施設における大規模地震に備えた減災対策が急務である.大規模地震時には,万一の施設の被災が想定されることから,施設被災後の被害拡大を抑止する災害対応が重要となる.しかし,災害対応もまた大規模地震時には健全に機能するとは限らない.本研究では,用水路施設管理における災害対応力の強化を図るリスクマネジメントの確立を目指して,頭首工と開水路で構成される典型的な幹線用水路施設を対象に,震災時の災害対応を阻害するリスク源の特定を行った.施設管理者への聞き取り調査から,地震発生直後の災害対応において管理者がとくに慎重を期すのは,幹線用水路の通水を停止するか否かの判断であることが分かった.そこで,管理者の「判断のミス」を誘発するリスク源をFTA手法により追究した.その結果,施設管理の範囲内において対策可能なリスク源のほか,地域の防災組織の中で対策を議論しなければならないリスク源が明らかになった.
  • 井上 敬資, 中里 裕臣
    2014 年 82 巻 2 号 p. 101-111
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    地震等で発生した地盤の亀裂に,石灰水のような電解物質を注入し,亀裂に対して平行な測線および直交する測線で2次元電気探査を注入前後に行い,亀裂範囲を簡易に推定する手法を提案する.ここでは,亀裂範囲の推定に対して,2次元電気探査から得られる推定結果の特徴を数値実験により調べ,屋外試験においてその適用性を検討する.数値実験では,亀裂に平行な測線において,比抵抗変化がある水平範囲はモデル亀裂長さに対応した.亀裂に直交する測線においては,亀裂長さより亀裂深さが大きい場合は推定深さと実深さの相関は悪くなるが,亀裂長さより亀裂深さが小さい場合は,注入材料の深度方向への広がりを推定できることを明らかにした.屋外試験においても,亀裂の水平方向の広がりを推定できること,亀裂長さより亀裂深さが小さい場合は注入材料の深度方向への広がりを推定できることを確認した.以上の結果から,亀裂に平行な測線からその水平範囲を推定し,その結果に基づいて直交する測線から鉛直範囲を推定できることを示した.
  • Yutaka SAWADA, Michio MIYAKE, Hiroko SUMIDA, Toshinori KAWABATA
    2014 年 82 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    Pore water pressure and liquefaction in a saturated sand bed induced by tsunami are theoretically and experimentally discussed. A governing equation on the basis of the Darcy's law is presented, and a centrifugal model test is carried out to verify the applicability of the governing equation. In addition, numerical simulations are performed in one-dimension, giving observed sea levels by GPS buoys on 11 March, 2011 (MLIT Japan) as the input data, in order to evaluate pore pressure and liquefaction by the actual tsunami. Moreover, parametric studies are performed assuming a permeable layer as silt, and the influence of permeability on liquefaction is discussed. Experimental results show that the effective stress decreases due to tsunami. It is evident that the calculated values are in good agreement with the observed values, and the governing equation is applicable to evaluate the liquefaction potential. In addition, it is revealed that liquefaction can occur due to the actual tsunami even if the permeable layer is comparatively good drainage like sandy soil. It is also clear that the excess pore water pressure ratio increases with the decrease of permeability at the shallow depth, and the influence ranges up to the depth of 4 m below the ground.
研究報文
  • 森 晃, 水谷 正一, 後藤 章
    2014 年 82 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2015/04/25
    ジャーナル フリー
    近年,ナマズは一時的水域における産卵場所の減少と産卵場所への移動阻害により生息数は減少している.本研究では,栃木県宇都宮市における圃場整備後の小排水路を対象に,ナマズの産卵から稚魚までの成育過程を調査し,繁殖および成育場所として成立する要因を考察した.小排水路はコンクリートフリューム構造で,水路内には複数の落差工が存在する.しかし,水路底には泥が堆積し,水位差は降雨によって一時的に解消することから,水路はナマズの繁殖場所として機能していたことを確認した.幼魚は1ヶ月間で全長は約2.6倍となり,その後接続河川へ降下した.水路は成育場としても機能し,このことは幼魚の餌生物が豊富であることや泥底が存在に関連するものと考えられた.
研究ノート
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