石川県白山市の実際の水田を用いた掛流し灌漑試験により,夜間掛流し灌漑が,出穂後20日間の水田の平均水温・地温,および,米の外観品質に与える影響を調べた.結果,出穂後20日間の平均水温は,総灌漑水量が986mm,782mmの灌漑(1回あたりの灌漑水量123mm,78mm)で,それぞれ,水口で2.3℃,2.2℃,水田中央で2.2℃,0.8℃,平均気温と比べて低温となり,水尻では平均気温とほぼ同じであった.しかし,後者の灌漑条件では,水田中央までは慣行の水管理と比べて水温は低温となったが,それより遠方では高温となった.出穂後20日間の表層(深さ10cmまで)の平均地温は,平均水温とほぼ同じであり,深さによる違いはほとんど見られなかった.また,白未熟粒の割合は,高温年では掛流し灌漑によって慣行の水管理下の水田よりも減少したが,低温年では減少しなかった.