2021 年 89 巻 1 号 p. II_33-II_39
水田転換畑での栽培において適時の灌水が行える指標が望まれている.本研究では, 農業気象データを活用して水田転換畑の保水量を水収支により推定する.水収支で用いるバケツモデルの最大・最小保水量を土壌水分計の測定値に基づいて設定する場合と土壌水分特性から設定する場合を比較検討した.3つの水田転換畑圃場を対象に保水量の推定を行った結果, 実測に基づく最大・最小保水量の設定により降雨のピーク時以外は保水量の推移を比較的良く再現できることや, これまで提案されている最大保水量を圃場容水量, 最小保水量を永久しおれ点に設定する場合と比べて水田転換畑の保水量をよく再現できること, 土壌水分測定方法(土壌水分計の種類や設置方法)の違いによる推定精度の差はほとんどないことが確認された.また, 保水量の推定値から計算される保水割合をもとに灌水の判断指標を提案した.