各都道府県に行ったアンケート結果から, 農業用ため池に関わる新法施行後(平成31年法律第17号, 令和2年法律第56号)のため池廃止工事件数は3倍程度に増加しており, 今後もため池廃止工事への取り組みが促進されると伺える.そのため, 本報文では1道18県85箇所で調査したため池の廃止工事例を体系的に取りまとめ, 特徴的な廃止工事例について示した.主なため池の廃止工法は, 開削工法, 暗渠工法, 埋立工法の3種類であったが, それらを組み合わせた複合工法も見受けられた.特に, 排水時の土砂流出を防ぐための沈砂池を池敷内に設置したり, 排水用暗渠埋設管の閉塞を防ぐための流木止めを設置する等, 明確な対策工法や設計指針がない中で, 各自治体が独自に創意工夫して対応している実態が明らかになった.