2023 年 91 巻 1 号 p. II_31-II_39
農村を取り巻く外部環境が不確実かつ複雑化する中, 複数の未来を想定し対策を検討するシナリオ活用の重要性が高まっている.しかし, 行政主導のシナリオプランニング・ワークショップ(以下, WS)では高いシナリオ精度を求められるため, 事前調査や専門家召集など複雑なプロセスが必要となり, 人的リソースが不足しがちな農村地域において実施は難しい.そこでシナリオプランニングWSが持つ参加者の学習効果に着目し, 専門家等の召集や事前調査を行わず少人数の住民参加でも開催できるシナリオプランニングWS手法を考案し, 京都府A町にて実施した.実施後のアンケート調査では, ①複数の未来描写による備えの構築ができる, ②参加者のメンタルモデルの更新がされる, ③多様なステークホルダー間の関係性が強化される点に一定の効果が得られることを確認できた.今後の課題として, 多様な参加者によるWSの実施, 住民だけで議論可能なテーマ範囲の検証, キーワード抽出を容易にするための関連情報の付与, 高齢参加者への時間的負担の軽減が求められる.