2023 年 91 巻 2 号 p. I_175-I_183
本研究では,愛媛県久万高原町のトロメキ地区の地すべりを対象に,3つの観測孔の孔内傾斜計による現地観測と地下水位,雨量データを利用して,測線方向に対する地すべり移動の傾向と深さに応じたせん断変位特性を調査した.3つのうち最も標高の高い観測孔では,深度1~4 mと9~10 mの区間にすべり面が確認され,相対的に浅い1~4 mでは降水量の多い春季から秋季に変位速度が増加したものの,相対的に深い9~10 mでは季節変動が確認されなかった.しかしながら,平成30年7月豪雨によって日平均雨量が50 mmを超えた期間では,9~10 mのすべり面も大幅に変位速度が増加した.一方,最も標高の低い観測孔では,深さの異なる地点に2か所のすべり面が存在したものの,いずれも降雨への応答性はみられなかった.また,観測孔によらず,深さの異なるすべり面は類似方向へ遷移することがわかった.