2023 年 91 巻 2 号 p. I_221-I_230
年河川負荷量は1年間に河川を通じて下流に輸送される物質総量であるが,この量を正確かつ精度良く推定するために,定期調査に加えて高流量時の水質調査がしばしば実行される.本研究では,米国の9流域からの計25年分の7項目にわたる日単位の水質濃度と流量データを用い,月1回の定期調査に年8個の高流量時データを加えるサンプリングと,年12個の離散的な流量比例サンプリングに対し,正確かつ精度の高い推定結果を与える推定量について検討を行った.この結果,前者のサンプリングではbias-corrected regression estimatorが,後者ではHorvitz-Thompson推定量が正確かつ精度の高い負荷推定量を与えることがわかった.rating curve法による推定量は,前者のサンプリングに対して偏った推定量を,後者に対しては他の2つの推定量よりも大きな不確かさを与える傾向があった.