抄録
取水塔の地震時応答が未だ十分に解明されていないのは, 基礎が水面下にあるため, 入力波形を直接計測することが困難だからである. 筆者らはこの点に着目し, 地震入力波形を塔から580m離れたダム堤体基礎部の地震計の記録で代用して, 応答計算を行った.
振動モデルは, 曲げと剪断が支配的と仮定したものと, 塔基礎部がロッキング振動すると仮定したものの2種類を考えた. 両者の固有振動モードを用いて応答加速度波形のシミュレーションを施し, パワースペクトルの形状およびrms値を, 塔頂部における地震加速度観測波形と比較した. これらの解析から, 塔体の物性値や減衰性を同定し, 耐震設計に寄与しうる情報を得ることができた.