農業土木学会論文集
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中筋川における栄養塩濃度分布と冬季の赤潮発生について
伴 道一福田 裕毅木村 晴保
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1999 年 1999 巻 202 号 p. 525-532,a2

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抄録
高知県中筋川を対象とし, 自然河川における秋季から翌年春季までの寡雨, 小流量期の水質環境に着目し, 特に窒素・リンに代表される栄養塩類濃度の高濃度化の過程とこの縦断分布特性, そしてこの時期に生じる植物プランクトンの異常増殖の実態について明らかにした.冬季には少雨による河川流量の減少により, 下流部約8km の区間における無機態窒素の平均濃度が夏季の約4倍にまで上昇する.河道縦断的に見ると, 1年を通じて感潮部の上流端付近で栄養塩濃度が極大となり, これより下流では河口に近づくほど栄養塩濃度が低下する.これには潮汐によって生じる河道内の往復流と塩水の侵入による希釈効果が深くかかわっている.
赤潮は低水温, 塩水存在下という増殖には不利な条件にも関わらず, 上記の栄養塩濃度が極大となる場所およびその下流域で冬季に限り発生し, その発生位置は河川流量の僅かな増減と強い相関が見られる.赤潮水塊の分布形状は潮汐の干満による河川流の時間的変化の影響を強く受け, 上げ潮後期から満潮時に最も明瞭に水面上に分布し, 下げ潮になると速やかに消滅する.これは上げ潮による赤潮水塊の収束と下げ潮による水塊の引張, そしてプランクトン自身の鉛直移動によるものと考えられる.植物プランクトンの増殖に必要な栄養塩類が継続して補給されること, これを用いて増殖する植物プランクトンの増加速度が河川流による移流作用を凌駕することによって, 本川のように一方向の平均流が常時存在する河川においても赤潮状態が長期にわたり維持されるということが明らかになった.
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© 社団法人 農業農村工学会
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