農業土木学会論文集
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1999 巻, 202 号
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  • 川田 祐二, 加藤 誠, 西村 拓, 鈴木 音彦
    1999 年1999 巻202 号 p. 431-436,a1
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    正規圧密された土の静止土圧係数 (K0) の推定式にJáky式K0=1-sinφ'がある.また, 過圧密された土の静止土圧係数は, 今日までにSchmidtやMayneらによって推定式が提案されている.これらの推定式中の係数α及びmrは, Jaky式と同様に有効内部摩擦角φ'の式として表されている.
    本研究では, 河北潟粘性土を用いて, 過圧密状態にある粘土のK0三軸圧縮試験を行い, 従来の過圧密粘性土のK0の推定式の有効性を確認した.そして, K0の推定式に含まれる係数αとmrを求める式として, φ'を用いない関係式を提案した.その結果, αについては正規圧密時の静止土圧係数 (K0) と塑性指数 (Ip) を, mrについては正規及び膨張時の静止土圧係数と最大過圧密比を用いた係数の推定式を提案した.
  • 酒井 俊典, Erizal, 宮内 定基
    1999 年1999 巻202 号 p. 437-443,a1
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    支持力問題やアンカー問題を対象に、進行性破壊に基づくスケール効果の研究が幅広く行われてきている。しかし、擁壁問題に対するこれらの検討は現在まで十分ではない。本研究では、水平方向に擁壁が移動する受働状態を対象に、密詰め砂地盤における擁壁の進行性破壊および、これに基づくスケール効果について、モデル実験と勢断帯・ひずみ軟化を考慮に入れた弾塑性有限要素解析の両面から検討を行った。モデル実験では、地盤の積上げ高さ5m、10m、15mに対して、擁壁面に設置した3個の土圧計の土圧変化を求めるとともに、ガラス壁面を透して勇断帯の発達過程の観察を行った。有限要素解析では、実験に対応した地盤高さに対し、土圧変化および勇断ひずみ分布を求めるとともに、実験では不可能な、プロトタイプについての解析も行った。実験および有限要素解析の結果、積上げ高さ15m程度までは、実験および解析とも進行性破壊は認められるものの、スケール効果は顕著でなかった。これに対し、積上げ高さが15cmを超えると、解析によってスケール効果が顕著に認められることが明らかとなった。また、積上げ高さ (h) を50%粒径 (d50) で無次元化したh/d50が1000を超えると、スケール効果が顕著となることが明らかとなった。
  • Niaz AHMAD, R. S. KANWAR, 北村 義信, 矢野 友久
    1999 年1999 巻202 号 p. 445-452,a1
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    過湿状態がトウモロコシの根系と窒素吸収に及ぼす影響について, 環境制御の可能なグロスチャンバーを用いて実験を行った。2種類の過湿状態 (3cm深の地表湛水と地表面下15cmの地下水位) のそれぞれに4段階の過湿ストレス (SEW30の概念で定義される90,180,270および360cm-dayの過湿ストレス) を, 出芽後23日目から与えた。2種類の過湿状態のもとでの根の分布, 根長, 根の乾物重および根の窒素吸収等を比較して, それぞれの過湿状態が根に及ぼす影響を分析した。トウモロコシの根の生育状況は, 地表湛水状態のときよりも, 地下水位が地表面下15cmの状態のときの方がはるかに良好であった。窒素吸収量は, 地表湛水状態にある場合, ストレスが増すにつれて大きく減少したが, 地下水位が地表面下15cmの状態では, SEW30が増大しても目立った減少はみられなかった。本研究により, 排水の悪い土壌においては, 地表湛水を回避し, かつ地下水位を地表面下15cm程度まで下げることができれば, 根群域が過湿な状態であっても, トウモロコシの生長阻害はかなり防止できることが明らかとなった。
  • 有明干拓新白石排水樋門右岸側取付堤防の場合
    東 孝寛, 高山 昌照, 飯盛 三郎, 西野 和夫
    1999 年1999 巻202 号 p. 453-465,a1
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本文では, 新白石排水樋門の右岸側取付堤防の建設に伴う基礎地盤の挙動を明らかにするために行った圧密変形解析結果を述べている.本解析は, 微小変形理論および有限変形理論に基づく弾塑性FEMによるものである.解析結果と層別沈下計, 孔内傾斜計や沈下板による動態観測結果を比較した結果, 鉛直変位については, 透水係数として圧密試験から求まる透水係数の10倍の値を使用し, 地表面に湛水があるとした有限変形解析結果が実測値とよく一致した.一方, 側方変位は, 解析結果の方が大きく, 実測値の約2~2.5倍となった.また, 地盤沈下の影響を検討するために, 帯水層 (砂層) の全水頭の変化を考慮した有限変形解析を行った.その結果, 新白石排水樋門に最も近い佐賀県の地盤沈下観測井の地下水位変動パターンと相似な全水頭変動パターンを採用し, 全水頭の最大低下量を4mとした場合の鉛直変位は, 層別沈下計による実測値とよく一致した.
  • オープン型パイプラインの水理特性 (II)
    宋 徳全, 前川 勝朗, 大久保 博
    1999 年1999 巻202 号 p. 467-476
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    急勾配単一管路における無通気状態と通気状態での管内諸流況の発生領域を実験的に調べ, 管内全域満流時の境界を指標として検討した.研究成果は次のようである.
    最初に, 管内全域満流と管内に空気塊を有する流れ (無通気状態) の境界ではHo/D1.5であることを示し, 管流入口直下流の空気塊内の圧力水頭との関係を示した (Ho: 管流入口前の水深, D: 管径).次に, 管内全域満流と他の流況は水理的関係式を用いて区分できること等を示した.そして, 管内に空気塊を有する諸流況の発生領域の特徴を示し, 参考として移動跳水の発生領域式を示した.
  • 2段階2項選択法と支払カード方式による分析
    吉永 健治, 吉田 謙太郎, 矢部 光保
    1999 年1999 巻202 号 p. 477-482,a1
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    大分県湯布院町の農村景観保全政策を事例として, 2段階2項選択法及び支払カード方式CVMによる便益評価を行った.その結果, 湯布院町民の農村景観に対するWTPの平均値は, 2段階2項選択法が年間8,758円, 支払カード方式が年間5,284円であり, 両者は統計的に有意に異なることが明らかとなった.これらのWTPを全町単位で集計した総便益評価額は, 現在の政策費用の13~22倍に相当することが明らかとなった.また, 2段階2項選択法については, 第1提示額がWTPに影響を与える初期値バイアスが検出された.さらに, 支払カード方式については, トービットモデルによりマイナスのWTPを考慮した分析を行った.
  • Zaw Lwin Tun, 青山 咸康, Nguyen Canh Thai, 長谷川 高士
    1999 年1999 巻202 号 p. 483-497,a2
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    不飽和多孔質体の, 3相系 (骨格-水-気体) 流体変位の相互作用を扱う数値モデルを提案した.提案モデルは新しい多孔質体の理論-一般化ダルシー則と骨格変位, 理想気体則, 毛管水の概念及び液相の流れにおける相対透水係数を考慮したモデル-にもとついて導いた拡張有効応力の概念によっている.提案した場の連成問題を表す微分方程式系は解析解を得るにはあまりに複雑なので, 数値解 (有限要素法と時間積分におけるθ法) を用い試行例題を解析した。提案モデルの有効性を示すため, 鉛直土柱の完全連成系の圧密問題の解析を行い, 次いで3相系の地盤がタワミ性基礎から載荷される場合の地盤挙動を解析し、提案モデルの有用性と制約を論じた。
  • 渡辺 正平
    1999 年1999 巻202 号 p. 499-508,a2
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文は, 剛性基盤が存在する場合を含めて, 2次元多層弾性地盤が表面に垂直荷重を受けたときの解析解を, 半無限体と有限領域の場合に分けて示すことを第1の目的とした.解析解の誘導には, Airyの応力関数とは異なる2次元の応力関数を使用した.解析解は, いずれも平面ひずみと平面応力の区別, さらに, 層境界面や剛性基盤面での粗滑の区別に対応できるものである.そのため, 解析解は, 層数や層厚, 弾性定数などが同じであっても半無限体の場合は12種類, 有限領域の場合は8種類に別れる.なお, 層境界面が滑, つまりこの面での勢断抵抗力が0の場合の有限要素法による計算法を示すことを次の目的とした.そして, 半無限2層弾性体の弾性定数が2種類の組合せについて, 解析解に対する数値計算例を示した.つぎに, 有限領域多層弾性体の層境界面が粗と滑のそれぞれの場合について, 解析解と有限要素法による結果を比較対照した.
  • 渡辺 一哉, 大久保 博, 前川 勝朗
    1999 年1999 巻202 号 p. 509-515
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    親水公園の利用実態は必ずしも明白にはなっていない。それら施設が有効に利用されるためには配置や整備計画は、利用者の評価や要求を考慮して行うことが必要である。本論においては山形県の農業用の貯水池、ため池において最も盛んに行われているヘラブナ釣りを例として釣場に対する釣人の評価と要求について調査を行い検討した。その結果、利用圏は5つに分類された釣り人の評価から説明され、さらに釣り場は3つのタイプに分類することができた。以上より、最適配置計画を行う際の基礎的な知見を得ることができた。
  • 底面融雪の研究 (2)
    倉島 栄一, 関 基, 加藤 徹, 向井田 善朗
    1999 年1999 巻202 号 p. 517-524
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    底面融雪の観測は比較的多く行われてきた.しかし底面融雪と他の要因による融雪との区別が困難であるため, 長期にわたる観測例は一部の厳寒地に限られ, 底面融雪が河川流出に与える影響を評価することは困難であった.さらに山地流域の多くの面積を占める森林内における底面融雪の観測はほとんど行われていない.
    そこで根雪期間にわたり, 開けた気象観測露場と落葉樹林内に熱収支法にもとづく底面融雪推定方法を適用して日底面融雪量の推移を推定し, 両地点の違いを明らかにした.さらに降雪量を仮定して, 積雪深が底面融雪に与える影響を評価した.その結果は, 既往の観測例と定性的な一致をみた.
  • 伴 道一, 福田 裕毅, 木村 晴保
    1999 年1999 巻202 号 p. 525-532,a2
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    高知県中筋川を対象とし, 自然河川における秋季から翌年春季までの寡雨, 小流量期の水質環境に着目し, 特に窒素・リンに代表される栄養塩類濃度の高濃度化の過程とこの縦断分布特性, そしてこの時期に生じる植物プランクトンの異常増殖の実態について明らかにした.冬季には少雨による河川流量の減少により, 下流部約8km の区間における無機態窒素の平均濃度が夏季の約4倍にまで上昇する.河道縦断的に見ると, 1年を通じて感潮部の上流端付近で栄養塩濃度が極大となり, これより下流では河口に近づくほど栄養塩濃度が低下する.これには潮汐によって生じる河道内の往復流と塩水の侵入による希釈効果が深くかかわっている.
    赤潮は低水温, 塩水存在下という増殖には不利な条件にも関わらず, 上記の栄養塩濃度が極大となる場所およびその下流域で冬季に限り発生し, その発生位置は河川流量の僅かな増減と強い相関が見られる.赤潮水塊の分布形状は潮汐の干満による河川流の時間的変化の影響を強く受け, 上げ潮後期から満潮時に最も明瞭に水面上に分布し, 下げ潮になると速やかに消滅する.これは上げ潮による赤潮水塊の収束と下げ潮による水塊の引張, そしてプランクトン自身の鉛直移動によるものと考えられる.植物プランクトンの増殖に必要な栄養塩類が継続して補給されること, これを用いて増殖する植物プランクトンの増加速度が河川流による移流作用を凌駕することによって, 本川のように一方向の平均流が常時存在する河川においても赤潮状態が長期にわたり維持されるということが明らかになった.
  • 大迫ダムの洪水時放流事例とその分析から
    中西 憲雄, 加藤 敬, 常住 直人
    1999 年1999 巻202 号 p. 533-539
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用ダムは, 灌漑のための水源として利用される過程で, その貯留機能によって, 洪水のピーク流量を小さくするという洪水低減機能を発揮すると考えられる.このため, 大迫ダムにおける洪水時の流入と放流の実態を調査して, ピーク放流量がピーク流入量に対し小さくなること及び洪水によってはピーク放流量があまり小さくならないことを明らかにした.また, ダムの洪水低減機能について, 流入量に対する放流量を水理学的に解析し, 洪水低減機能は, 空き容量あるいは洪水吐クレスト天端から上の一時的な貯留により, 洪水をカットすることによって生ずるものであることを明らかにした.
  • 尾崎 益雄, 田中 恒夫, 中曽根 英雄
    1999 年1999 巻202 号 p. 541-546,a3
    発行日: 1999/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    接触曝気方式の高度化における生物活性炭を用いたろ材 (生物活性炭ろ材) の有効性を検討するため, 嫌気好気ろ床法をモデル化した装置に生物活性炭ろ材あるいは比較検討用の網状骨格体ろ材を充填して連続実験を行った。実験装置の好気第2槽において, 生物活性炭ろ材と網状骨格体ろ材の交換を行った。実験は, 高DO濃度 (3.5mg/L以上) と低DO濃度 (1.5mg/L以下) の異なる条件下で行った。網状骨格体から生物活性炭へのろ材交換により, 硝化, 脱窒およびBOD除去の速度は増大した。特に, 高DO濃度条件下でろ材交換の効果は大きかった。生物活性炭ろ材の適用効果は, 活性炭付着細菌への物質 (酸素, 窒素および有機物等) 移動の効率化, あるいは生物活性炭表面の物質濃度の上昇等による比活性の増大と考えられた。生物活性炭の比活性は網状骨格体ろ材付着微生物のそれの2~4倍であった。加えて, 本実験 (実験期間60日) では生物活性炭ろ材の閉塞は観察されなかった。これらの結果より, 生物活性炭の充填床をろ材として用いることは接触曝気方式の高度化に対して有効と考えられる。
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