抄録
筆者らが紀の川流域を対象に開発した流域水循環モデルを用いて, 従来, 定性的に評価されることが多かった, 流域におけるブロックごとの農業用水需給と反復利用を定量的に分析した.需給分析では, 水田の面積割合が大きく, 水源の溜池依存度が高い中流域のブロックで用水不足が生じやすく, 河川掛水田の多い下流のブロックで用水が安定的に供給されている状況が示された.反復利用分析では, 頭首工取水に対する上流農地から還元された灌漑水による流出の寄与が, 下流ほど大きくなる (最上流頭首工で約1%, 最下流で約25%) 状況や, 取水に対する上流農地からの流出水の寄与が, 水田の灌漑ステージや降雨パターンによって変動する状況などが定量的に示された.