農業土木学会論文集
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2000 巻, 205 号
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  • 飯山 一平, 宮崎 毅, 中野 政詩, 井本 博美
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 1-11,a1
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    排水に伴う泥炭土の収縮挙動を明らかにするために飽和柱状供試体からの排水を行い、供試体高さ、排水量、各高さでの垂直方向のひずみ、マトリックポテンシャル分布をそれぞれ経時測定した。さらに、マトリックポテンシャル分布変化から求めた含水率分布変化から圧縮応力分布変化を定量的に評価した。また、地下水位変動に伴う泥炭土の収縮・膨張挙動を明らかにするために、排水および給水を繰り返した際の供試体の収縮・膨張挙動を経時測定した。その結果、泥炭土の収縮挙動は、浮力の喪失に伴う圧縮応力の増加によるものであり、(1) マクロボアからの排水を伴う急激な収縮、(2) ミクロボアからの排水を伴う緩慢な収縮、(3) 空隙体積及び固相体積の減少による長期的な収縮の3ステージに分けられた。また、泥炭土の種類による不飽和収縮挙動の相違は乾燥密度、間隙径分布、飽和度、間隙水の持つ負圧の相違により生じていると考えられた。不飽和状態下の膨張挙動は、間隙水の持つ負圧が毛管上昇に伴い減少することによるものと推定された。排水・吸水の繰り返しに伴う泥炭土の長期的な収縮挙動から、残留ひずみによる不可逆的収縮が持続することを認めた。
  • 朴 鐘華, 甲本 達也
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 13-17,a1
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    撹乱粘土の圧縮特性を表す係数として, 圧密試験により得られるe~10gp曲線 (e: 間隙比, p: 圧密圧力) の勾配である圧縮指数C'cと体積圧縮係数M'v小をとりあげた.これまで, 多くの研究者によってC'c式は, 土の状態量を表す初期間隙比e0や土の種類を表す液性限界WLなどを用いた関係式で提案されてきた.本論は, 土の状態量を表す初期間隙比e0を (1+e0) で除すことによって正規化した初期間隙率no (=100e0/(1+e0)) をとりあげ, 撹乱粘土の圧縮指数C'cn0, 撹乱粘土の体積圧縮係数M'vnoとの間の関係を検討し, 統一的に両者の関係を相関よく表現できる関係式を得たものである。
  • 朴 鐘華, 甲本 達也
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 19-23,a1
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    既に得られた撹乱粘土の圧縮指数C'cと初期間隙率n0, 体積圧縮係数M'vn0との間の関係をもとに, 不撹乱有明粘土の圧縮指数Ccn0, mvn0の関係を粘土の骨組構造の指標である鋭敏比Stをパラメータとして導入して検討した.いま, CcC'c, mvMv小との間にそれぞれCc=KcC'c, Mv=Kmm'vの関係を仮定すると, 種々の鋭敏比の粘土について, KcSsとの間には, 高い相関のもとにKc=St0.22の関係式が, KmStの間には, Stによらずほぼ一定値Km=1.1が得られた.
  • 毛利 栄征, 河端 俊典, Hoe I. LING, Lixun SUN
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 25-33,a1
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地中に埋設されるパイプラインは地下水位の上昇によって浮力が作用する場合がある.この上向きの押上げる力に対する抵抗力はパイプに作用する鉛直土圧やアンカー基礎の引抜き抵抗力の予測式などを用いて求めることができる.しかしながら, これらの予測式は土被りがパイプやアンカーの基礎幅に比べて2倍以上の比較的深い領域での研究の蓄積を基本としており, 直径以下の極浅く埋設するパイプラインなどには適用実績を持っていない.
    本論では, パイプの押上げ実験を実施しジオグリッドや砕石などを用いたパイプの浮上対策方法は無対策のものに比べて押上げ抵抗力の改善効果が大きく極浅く埋設した場合でも3倍の抵抗力を発揮すること確認した、さらに, 既往の抵抗力の予測式と比較し, VermeerやTrautnannの提案するモデルによる予測式が対策工法の浮上抵抗力を十分予測できることを明らかにした.
  • 流域水循環モデルによる農業用水利用の分析 (II)
    中桐 貴生, 渡辺 紹裕, 堀野 治彦, 丸山 利輔
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 35-42,a1
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    筆者らが紀の川流域を対象に開発した流域水循環モデルを用いて, 従来, 定性的に評価されることが多かった, 流域におけるブロックごとの農業用水需給と反復利用を定量的に分析した.需給分析では, 水田の面積割合が大きく, 水源の溜池依存度が高い中流域のブロックで用水不足が生じやすく, 河川掛水田の多い下流のブロックで用水が安定的に供給されている状況が示された.反復利用分析では, 頭首工取水に対する上流農地から還元された灌漑水による流出の寄与が, 下流ほど大きくなる (最上流頭首工で約1%, 最下流で約25%) 状況や, 取水に対する上流農地からの流出水の寄与が, 水田の灌漑ステージや降雨パターンによって変動する状況などが定量的に示された.
  • 酒井 俊典
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 43-53,a1
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    受働状態のトラップドア問題において、地盤材料に2種類の粒径のガラス玉を使用し、地盤の層厚と粒子径を変化させた2層地盤における剪断帯の発達過程および粒子径の影響についての検討を行った結果、下層および上層の粒子径、地盤の層厚などの条件によって剪断帯の発達過程が異なった。また、剪断帯の発達過程の違いにより地盤の進行性破壊の程度にも違いが見られ、この違いがピーク土圧値が異なる原因であることが明らかになつた。剪断帯の幅は、粒径が異なる層を境に地盤粒子径の20倍程度に依存し、その形成は、ドア部の上昇に伴つて粒子の移動する領域としない領域を分ける境界ラインが順次内側に移動し、この移動する境界ラインの幅が粒子径の20倍程度となった時点で形成されることが明らかとなつた。
  • 乾燥地における二次的塩害防止のための水管理研究 (I)
    北村 義信, 矢野 友久, 安田 繁, 大庭 達哉
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 55-64,a2
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    アラル海流域のシルダリア川下流域においては, 灌漑農地の二次的塩害が重大な問題となっている。この二次的塩害の発生メカニズムを明らかにするため, 水稲を中心とする輪作体系が行われている灌漑ブロックにおいて, 広域塩分収支, の研究を行った。現地実験で得られた主な結果は, 次のとおりである。1) ブロックへの取水量は, 灌漑面積に比べてきわめて多い。取水は, 作物用水量によるよりも, 水路系の送水能力によって操作されている。2) 灌漑ブロック内の用水路の搬送損失は, elkm当たり約5.8%である。3) 水稲作付区における圃場面の均平状況は, 耕区内で±15cmを超える高低差があり, きわめて劣悪である。圃場内の湛水深管理は, 最高位部を基準に行われるため, 必然的に深水状態になり, 圃場および用水路の管理用水量の増大につながる。また, 水稲の生育過程に伴う水管理の実態が明らかになった。4) 水稲作の不可避的損失 (蒸発散量と降下浸透量の合計) の灌漑期間を通じた平均値は, 約9.3mmd-1と推定された。水稲区への灌漑水量の大部分が排水路への流出として失われており, このことがブロックの灌漑効率を低くしている。取水量と地表排水量が大きい理由として, 圃場湛水の塩性化抑制の目的があることが示唆された。
  • 新城 俊也, 小宮 康明, 山城 陽
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 65-73,a2
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    国頭マージ地帯における赤土流出防止対策はさんご礁海域の環境保全の観点から重要である.本研究では, 国頭マージ土の盛土のような土構造物への有効利用を目的としてセメント安定処理した国頭マージ土の受食性と力学特性を検討した.侵食に及ぼすセメント添加量の影響はセメント安定処理土の野外侵食試験によって調べた。セメント安定処理土の侵食に対する抵抗性はセメント添加量2.5%以上で効果的である.さらに, セメント安定処理土の力学特性を明らかにするために締固め試験, スレーキング試験, 一軸圧縮試験およびCBR試験を実施し, セメント安定処理土の力学特性とそれに及ぼすセメント添加量および乾燥-水浸作用の影響を検討した.セメント安定処理は国頭マージ土の土質材料としての改善と土構造物表層部の侵食防止の面から有効な手法である.
  • Frederick K AMUMENSAH, 山本 太平, 井上 光弘
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 75-84,a2
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    著者らはガーナ国の3種類の農業環境地域で得られた土壌・作物・気象データとニジェール国の降雨流出係数を用いてシミュレーションを行い, 降雨依存農業に代わるガーナ国の持続的農法としてタンク灌漑を提案した.期間中にタンクが枯渇しないことを前提に集水エプロンと貯水タンク, 350m2の耕地における水収支を計算した.異なる気象条件下で2種類の灌漑法を適用した場合について, 3つの作物栽培の最適エプロン面積を決定した.スプリンクラ法と比較すると, 点滴法では必要なエプロン面積が柑橘で41%, トマトで22%, トウモロコシで28%に縮小され, 最適タンク容量は約40%に縮小された.これは点適法の適用下で蒸発散量が減少したことによるものである.降雨の多い地域では灌漑法による差はほとんどなかった.小容量のタンクは越流を生じやすく, 特にスプリンクラ法の場合に顕著であった.また少雨の年に広いエプロンを設定すると, 平均的な雨量の年に過大なタンク越流が生じた.
  • 吉野 邦彦, 串田 圭司
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 85-93,a2
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では、水稲個体群草冠からの分光反射特性の1つである複数角分光反射特性を用いた水稲品種判別能向上の可能性を、地上での複数角分光反射特性測定データの統計的検定により議論した、解析データとして、土壌、水、施肥量、気象等の栽培条件がほぼ、均一と期待できる実験圃場内に移植、栽培した水稲14品種 (同一日に播種) うちの11品種について、出穂前の盛夏の同一観測日に測定した各品種の草冠からの複数角分光反射特性データを用いた。測定した波長は、400nmから850nmの範囲の1nmごとの反射係数である。また、主反射面での後方散乱、前方散乱の7方向 (±45度、±30度、±15度、0度) と主反射面と直交する鉛直平面での7方向 (主反射面と同様) の測定角度から測定した,
    緑バンド (550nm~560mm)、赤バンド (675nm~685nm)、近赤外バンド (745mm~749nm) における分光反射係数を求め、水稲2品種の3バンドの複数角分光反射特性係数の平均値の間で、平均値の差の検定を行った。その結果、有意な差が認められた水稲2品種の組み合わせの数は、単に鉛直下向き反射係数データを用いた場合よりも、斜め方向から測定した反射率係数データを用いた場合の方が多かった。
    以上、本研究の結果から、出穂直前で同一生育段階における水稲の品種は、斜め方向からの分光反射特性をも利用することにより、鉛直真下方向の分光反射特性よりも判別がより容易になるものと結論づけられた。
  • 中曽根 英雄, 黒田 久雄, 加藤 亮
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 95-100,a2
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    著者らは水質タンクモデルによる水質流出解析について数年間調査・研究を行ってきた.その中で, 窒素の流出については流出過程における窒素の形態変化, 土壌への蓄積, 水田における脱窒, 集水域の土地利用などを考慮したモデルの必要性を強調してきた.今回, それらを全て考慮したモデルを構築し, 硝酸態窒素に関し計算値と測定値の比較を行った.その結果は, 十分満足できるものであった.したがって, 今回開発したモデルは集水域の窒素流出負荷の予測に, 有効に利用できることが分かった.さらに, このモデルは, 降雨量・窒素施肥量をデータとして与えることによって, 窒素の流出負荷量を計算できることを示した.したがって, 今回開発したモデルは, 流域レベルの水質管理計画策定の基礎資料として有効に利用できるものである.
  • 桐 博英, 藤井 秀人, 中矢 哲郎
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 101-107,a2
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    貯水池や密度差がある流れを対象とした数値シミュレーションでは, レベルモデルによる準三次元解析が行われる場合が多い。しかし, レベルモデルでは表層の層厚が水位の変動量に依存し, 水位変化が大きい場合には表層付近の再現性が低くなるため, 解析対象は水位変化が比較的小さな流れがほとんどである。本報では, 二次元洪水氾濫解析で用いられる移動境界手法を多層に拡張して, 水位が大きく変化しても層厚を大きく変化させることなく解析が可能な計算方法を提案し, その妥当性を検討した。数値解析例として直線水路における波の伝播の解析を行い, 水面が層の境界を越えても安定して計算が行われること, 従来のレベルモデルの解析法では再現が困難な表層付近の鉛直方向流速が再現できることを確認した。
  • 肥山 浩樹, 高山 昌照, 野田 力
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 109-117,a3
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    締固め時の含水比や密度が異なるまさ土試料について排水せん断試験を行い, 締固め条件がまさ土のせん断強度におよぼす影響について検討した.その結果, 締固めたまさ土のせん断強度は含水比の影響を受けないこと, 粘着力は, ρd0<1.79/cm3においてほぼ0であり, ρd0>1.79/cm3において乾燥密度の増加とともに増加すること, 内部摩擦角は乾燥密度の増加にともない直線的に増加することを明らかにした.また, ダイレタンシー補正により強度定数は減少し, 密度の高い試料ほどその補正量が大きくなることを示した.さらに, サクションー定の不飽和三軸圧縮試験を行い, サクションは粘着力の大きさに寄与していることを明らかにした.
  • 谷川 寅彦, 木原 康孝, 福桜 盛一, 矢部 勝彦
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 119-129,a3
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    この研究は造成農地における土壌水分消費機構と毛管補給を営農条件下で明らかにするために行われた.各造成団地で選定された作物と栽培様式は春夏作ではトンネル栽培スイカ, トンネル・マルチ栽培メロン, マルチ栽培カンショであり, 秋作では丸ダイコン, 大カブ, プロッコリである.対象とした造成団地の土性は砂土もしくは砂壌土であり生長有効水分量は概ね34-103mmでありバラツキは大きい.土壌水分張力は最も乾燥した土層で春夏作のトンネルやマルチ側方から水分移動補給される条件でpF2.9程度となり, 被覆の無い秋作の露地栽培でもpF25-pF2.9程度となった.このような条件下, 消費水量は春夏作と秋作物で1.1-7.9mm/dと算定された.さらに80cmより深い土層からの毛管補給水量は調査地の条件で乾燥時期には概ね1.2mm/d以上と推測された.
  • 高品質コンポスト化施設
    福井 真一, 山西 昇, 吉田 勲, 三崎 岳郎
    2000 年 2000 巻 205 号 p. 131-136,a3
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 公共用水域の水質保全, 生活環境改善のため汚水処理施設の整備が盛んに行われている.他方, 発生する汚泥量は年々増加し, 処分に要する経費は大きな負担となってきている.鳥取県の日吉津村, 大山町, 西伯町は汚泥の共同コンポスト化による農地還元を目指し, 高品質なコンポスト化の研究を行っている.本研究の結果, 次の点が明らかとなった。(1) 小型実験装置による長期間の発酵実験により, 槽内温度が60-80℃, 含水率が40-50%と良好な発酵を得た.(2) 二次発酵後のコンポスト製品の成分が, 有機質肥料等推奨基準値に適合する良好な製品となった.(3) 副資材に用いるカロリー源の米糠の添加が, コンポスト製品のカリ含有量を増加させる.
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