農業土木学会論文集
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中央アジアの水稲を中心とした輪作体系下の灌漑ブロックにおける水収支
乾燥地における二次的塩害防止のための水管理研究 (I)
北村 義信矢野 友久安田 繁大庭 達哉
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2000 年 2000 巻 205 号 p. 55-64,a2

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抄録

アラル海流域のシルダリア川下流域においては, 灌漑農地の二次的塩害が重大な問題となっている。この二次的塩害の発生メカニズムを明らかにするため, 水稲を中心とする輪作体系が行われている灌漑ブロックにおいて, 広域塩分収支, の研究を行った。現地実験で得られた主な結果は, 次のとおりである。1) ブロックへの取水量は, 灌漑面積に比べてきわめて多い。取水は, 作物用水量によるよりも, 水路系の送水能力によって操作されている。2) 灌漑ブロック内の用水路の搬送損失は, elkm当たり約5.8%である。3) 水稲作付区における圃場面の均平状況は, 耕区内で±15cmを超える高低差があり, きわめて劣悪である。圃場内の湛水深管理は, 最高位部を基準に行われるため, 必然的に深水状態になり, 圃場および用水路の管理用水量の増大につながる。また, 水稲の生育過程に伴う水管理の実態が明らかになった。4) 水稲作の不可避的損失 (蒸発散量と降下浸透量の合計) の灌漑期間を通じた平均値は, 約9.3mmd-1と推定された。水稲区への灌漑水量の大部分が排水路への流出として失われており, このことがブロックの灌漑効率を低くしている。取水量と地表排水量が大きい理由として, 圃場湛水の塩性化抑制の目的があることが示唆された。

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© 社団法人 農業農村工学会
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