抄録
愛媛県を対象とした市町村単位での統計的分析より, 米の生産調整に係わる耕作放棄多発地域に共通する農業地域特性とその背後にある労働力条件及び基盤条件を明らかにした. その結果, 耕作放棄地多発地域は, 都市的地域や山間農業地域に多く, 水田率が20~60%という特徴があり, 水田転作に必要な労働力条件及び基盤条件が整わないために耕作放棄地が多く発生していることがわかった. また, これらの地域では1戸あたり生産調整割当面積が8~15aと小さい. 小規模な生産調整面積の割り当ては, 区画の分割や区画全体の休耕を経て耕作放棄地の発生に結びつく危険性が高いことから, 地域性を無視した一律的な生産調整による弊害が指摘された.