抄録
灌漑システムに複数存在する水田ブロックに対し, 河川より取水された水を灌漑用水として配分する最適化モデルを提案する. 水理・水文学的パラメータの確率的変動および水管理目的のあいまいさに起因する不確実性に対処するため, ファジィ線形計画法による定式化を行う. これまでの研究で考慮してきた2つの目的, すなわち河川取水量の最小化と米の総収量の最大化に加え, 本研究では新たに, 各水田ブロックで水不足に陥るリスクの最小化も管理目的としてモデル内で考慮し, 局地的な利益も追求する. これらの互いに競合する目的の達成度のあいまいさを数学的に記述するため, ファジィ集合と対応する適切なメンバシップ関数を定義する. ファジィ決定として最小オペレータを採用し, 上記3種類の目的間の調和のとれた解を導く. 仮想灌漑地区にモデルを適用し, 灌漑用水の配分において用水量不足のリスクを新たに考慮することの有効性を明らかにする.