抄録
わが国の長期的な食料需給の不安定性に対応する方策として, 耕作放棄田をいつでも利用可能な状態で経済的に管理する方法の開発が必要と考えられる. そこで, 筆者等は復田コストに注目し, 維持管理方法を経済性に基づいて評価し, 多様な植生条件のもとで総費用を比較した. また, 維持管理方法の経済性以外の規定要因である緊急時の対応, 労働力の確保, 農家意欲の持続, 土壌保全, 周辺生産環境保全, 景観保全について併せて検討した. この結果, 以下の3項目を基軸とする耕作放棄田の保全戦略を提案した.(1) 粗放管理による維持管理を原則とする.(2) 維持管理方法は, 毎年の休閑耕による軽度の管理作業の継続を基礎とする.(3) 耕作放棄田は湿性での維持が望ましく, 木本は早期に刈り払い・排除するなどして大型化を防止する.