農業農村工学会論文集
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2008 巻 , 254 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 守山 拓弥, 藤咲 雅明, 水谷 正一, 後藤 章
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 85-94,a1
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水田水域の魚類相保全には, 水田や小溝, 農業水路, 河川などの間の水域ネットワークを維持することが重要であると指摘されている. 本研究では栃木県西鬼怒川地区の谷川, 九郷半用水, 内川, 西鬼怒川において, 魚道により構築された水域ネットワークでのウグイの移動を調査し, 水域ネットワーク構築の重要性について検討した. その結果, 他水域より谷川へ移入した個体の繁殖を確認し, 水域ネットワークの構築が谷川のウグイ個体群の保全に寄与している可能性が挙げられた. また, 谷川に造成した人工産卵場で移入個体以外の繁殖が多く確認され, 移動していない個体が多いことから, 谷川内に定住的に生息する個体が多数いると考えられた. 以上から, 農業水路での魚類の保全には, 水域ネットワークの構築と農業水路内における定住的な個体の保全が重要であると考えられた.
  • 松澤 真一, 水谷 正一, 森 淳, 後藤 章
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 95-105,a1
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    現在, 食物網を解析する手法として安定同位体比精密測定法が注目を集めている. しかし, これまでに農村地帯で食物網を詳しく解析する研究はほとんど行われなかった. そこで谷津内水路を中心に, 2004年の早春期, 初夏期, 秋期の計3回調査を行い, 栄養段階1の物質から魚類までの生物群集の安定同位体比を測定した. その結果,(1) 土水路の食物網は年間を通じてC3植物, あるいはC3植物が主構成物質の水路内粒子状有機物 (POM: Particulate Organic Matter) が主要な栄養段階1の物質であり, 栄養の供給を外部から頼る従属的な食物網であること,(2) 水田の食物連鎖系は水路系のそれと差がみられたこと,(3) 水路系では早春期には藻類から始まる食物連鎖系が存在すると考えられることが明らかになり, 安定同位体比精密測定法は水路系において食物網を解析するのに有効であることを示した.
  • 有田 博之, 山本 真由美, 大黒 俊哉, 友正 達美
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 107-113,a1
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    わが国の長期的な食料需給の不安定性に対応する方策として, 耕作放棄田をいつでも利用可能な状態で経済的に管理する方法の開発が必要と考えられる. そこで, 筆者等は復田コストに注目し, 維持管理方法を経済性に基づいて評価し, 多様な植生条件のもとで総費用を比較した. また, 維持管理方法の経済性以外の規定要因である緊急時の対応, 労働力の確保, 農家意欲の持続, 土壌保全, 周辺生産環境保全, 景観保全について併せて検討した. この結果, 以下の3項目を基軸とする耕作放棄田の保全戦略を提案した.(1) 粗放管理による維持管理を原則とする.(2) 維持管理方法は, 毎年の休閑耕による軽度の管理作業の継続を基礎とする.(3) 耕作放棄田は湿性での維持が望ましく, 木本は早期に刈り払い・排除するなどして大型化を防止する.
  • 陳 嫣, 平良 正彦, 上野 正実, 凌 祥之
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 115-121,a1
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    宮古島では近年, 化学肥料の過剰施用と畜産廃棄物の不適切な管理によって地下水の水質が悪化している. 本研究では, 地下水の硝酸態窒素の低減対策として, サトウキビとソルガムの輪作およびメタン発酵消化液などの有機肥料とバガス炭の農地施用による水質改善効果を検討した. その結果, 有機肥料やバガス炭の施用によって, サトウキビの糖度や原料茎重が向上し, 可製糖量が高くなった. またバガス炭の施用によって, 浸透流出水中の硝酸態窒素濃度が下がった. さらに, サトウキビ栽培後にソルガム栽培を行うことで, 化学肥料区においても, 栽培期間中窒素溶脱は総投入量の12%まで抑制することができた. 宮古島の夏植えサトウキビ栽培や地理条件を考えると, サトウキビ収量および糖度向上, さらに環境負荷の削減を図るためには, 有機肥料やバガス炭の施用とソルガムとの輪作栽培は有効な方策であることが確認できた.
  • 北村 浩二, 本間 新哉, 今泉 眞之, 加藤 敬
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 123-134,a1
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用水路の長寿命化とライフサイクルコスト低減に資するため, 農業用水路の現地調査による点検データを用いて, 壁面の摩耗劣化と継目劣化の劣化予測式を推定した. まず, 壁面の摩耗劣化による凹凸を屈曲率と侵食面積を用いて, 定量的に表現できることを示した. そして, 壁面の摩耗劣化と継目劣化について, 健全度評価基準を用いて, 既に補修実施済みの場合の初期建設時から補修実施時までの間の経年によって健全度が低下することを示す劣化予測式と, 補修が行われていない場合の初期建設時以降の劣化予測式を供用年数の1次式で推定した. これらを用いて, 補修実施後の再劣化予測式を推定した. また, 壁面の摩耗劣化と継目劣化の健全度分布の経年推移をマルコフ連鎖モデルで表現できることを示した.
  • 石黒 覚, 鈴木 隆善
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 135-141,a1
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    管更生工法に用いる裏込めモルタルはその目的によって種々のものが開発されている. 本研究では各種の裏込めモルタルについて楔挿入割裂法による破壊試験を実施し, 荷重-開口変位の計測結果から破壊エネルギーおよび引張軟化曲線の2つの破壊力学パラメータを解析した. これらの解析結果から, 使用材料や配合の異なる各種裏込めモルタルの破壊性状について比較および考察を行い, 細骨材の種類などがモルタルの破壊性状に大きく影響していることを示した. さらに得られた試験および解析結果から, 裏込めモルタルに適した引張軟化曲線の推定式を提案し, その適用性を検証するために供試体の破壊解析を行った. 推定式により求めた引張軟化曲線は, 各種裏込めモルタルの破壊挙動の予測に有効であった.
  • 上野 和広, 長束 勇, 野中 資博, 石井 将幸
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 143-150,a2
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用コンクリート水路に発生したひび割れを補修する材料に要求される伸び性能を明らかにするため, 農業用水路においてひび割れ幅の日変動量調査および年変動量調査を実施した. その結果, 長く薄いコンクリート版から構成される農業用水路では, 短期的な温度の日変化によってひび割れ幅が大きく変動することが確認され, 施設機能評価・診断, 補修の際にはその変動を考慮することの必要性が明らかとなった. また, ひび割れ幅の変動を推定する手法として, 過去の温度履歴を考慮した推定式を提案し, その妥当性を評価した. さらに, 最も狭くなったときのひび割れ幅に対するひび割れ幅の変動割合を算出したところ, 日変化で最大約37.8%, 年変化で最大約68.6%であり, 補修材料に要求される伸び性能が明らかになった.
  • 松島 健一, 田中 忠次, 毛利 栄征
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 151-160,a2
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地盤内に設置された矢板を引抜く際, 地盤に生じた空隙が応力の再配分を引き起こし, 地中構造物に大きな影響を及ぼす. 本研究では, 矢板引抜きに伴う地盤と地中構造物の相互作用メカニズムを解明するため, 矢板引抜き現象を考慮した数値解析モデルを開発した. 地盤中の応力解放は要素掘削手法を適用し, 空隙両側の不連続な地盤面の接触は, Belytshko et al.(1991) が提案したピンボールアルゴリズムを採用した. 本手法は, パイプラインを対象とした矢板引抜き模型実験における埋設管のたわみや地表面沈下などの挙動を定性的に予測できることが分かった. また, 地盤中のひずみや土圧分布の変化などから埋設管のたわみの発生メカニズムを明らかにすることができた.
  • 堀野 治彦, 中桐 貴生, 荻野 芳彦
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 161-167,a2
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    改正土地改良法が施行され, 環境との調和に配慮した土地改良事業が望まれるようになった. しかし, 例えば, 環境配慮型の圃場整備事業は未だ実績が多くなく, その効果を検証した例は少ない. そこで, 国営事業としては先駆的に行われた滋賀県木之本町黒田集落付近の環境配慮型用水路を対象に, 同水路によって魚介類の生息状況や通水機能がどのように影響を受けているのかを検証した. その結果, 環境配慮型水路は少なくともベンチフリュームのような従来型のコンクリート3面張り水路よりは, 魚介種の多様化や個体数の確保に寄与していることが確認された. しかし一方で, 漏水量や粗度係数の増加など通水面での問題もみられることがわかった.
  • 藤川 智紀, 中村 真人, 柚山 義人
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 169-179,a2
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    メタン発酵消化液 (消化液) の農地還元による, 土壌から大気への温室効果ガス (N2O, CO2, CH4) の発生量の変化を明らかにすることを目的に, 裸地圃場において消化液の施用試験を行った. その結果, 消化液の施用後N2O発生量は急激に増加し20日前後でピークを示すこと, CO2発生量の増加は50日以上続くことが分かった.積算発生量の計算からは, 施用後の52日間に, 消化液に含まれる窒素の0.17%がN2Oとして, 炭素の22%がCO2として発生したと推測された. CH4発生量は消化液に含まれる炭素の0.01%以下で温暖化への影響は小さいことが分かった. 表層土壌のガス拡散係数と土中ガス濃度の測定値から計算されるガス拡散移動量とガス発生量の測定値を比較した結果, 消化液施用後に発生したN20のうち1/3が表層0~2.5cmで生成されたこと, 発生したCO2は大部分がより深い層から移動してきたことが示唆された.
  • 中野 拓治
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 181-188,a2
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    生物膜法の農業集落排水施設におけるBOD除去性能の評価とその課題について, 供用中の施設から得られた観測データを基に検討を行った. 原水ポンプ槽原水BODと沈殿槽流出水BoD・Aru-BoDに係る濃度分布は, 対数正規分布によく適合しているとともに, 所要のBOD除去性能を発揮していることが確認された0沈殿槽流出水のBODは, Aru-BOD (硝化反応を抑制して得られるBOD) にN-BOD (窒素化合物の硝化にかかわるBOD) によるバラツキが加わって, 原水ポンプ槽原水よりも沈殿槽流出水の方が大きな分散状況になっていることが分かった. また, 沈殿槽流出水BODは, 沈殿槽流出水と希釈検水中に存在する窒素化合物の硝化反応に影響されて高い値となっているとともに, 処理水の採取箇所を沈殿槽流出部から消毒槽0放流ポンプ槽流出部に変更することは, N-BODによる影響を抑制し, 処理水のBOD測定値をC-BOD (有機物質の酸化にかかわるBOD) に近づけるための有効な手段であることが確認された. 生物膜法の農業集落排水施設においても, 現行のBOD測定法や処理水の採取箇所の変更等を通じて, BOD本来の目的である有機物の汚濁指標として適正に評価できるような対応策を講ずることが必要であると考えられる.
  • 吉永 安俊, 酒井 一人, 仲村渠 将, 仲村 元, 藤田 智康
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 189-195,a2
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 畑地における浮遊土砂の流出防止対策として土中排水法を考案し, その効果の検証と実用化の可能性を検討したものである.土中排水法とは, 地表水を浸透帯により地下に埋設した吸水管に導き排水する方法である.浸透帯は, 圃場を横断あるいは畦に沿って掘った溝に粒径2mmから20mm程度の粒状化土壌を詰めたものである.土中排水法は, 実験初期においては高い浸透機能と濾過機能が認められ, 地表排水量の抑制および浮遊土砂濃度を著しく低下させた.しかし, 浸透帯の表層クラストの形成により, その効果は低下した.耕転による表層クラストの破壊は土中排水法の効果を回復させるが十分ではない.土中排水法の実用化に向けて, 浸透帯の表層クラストの形成抑制や浸透強度の回復が解決すべき問題点であることが明らかになった
  • 加藤 亮, 兒玉 健和, 小林 慎太郎, 丹治 肇
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 197-203,a3
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ラオスの首都ビエンチャンのシサタナ地区の農業水路を対象に, 全窒素 (T-N), 全リン (T-P), COD濃度を推定する重回帰モデルを開発した.目的変数には, 現地調査で得た実測水質データを使用し, 対数を取ることにより正規化した.説明変数には, 水田, 宅地, その他の土地利用面積を使用した.p値は, T-Nは0.034, T-Pは0.002, CODは0.016であり, 統計的に有意な値であったが, 決定係数R2は, T-Nは0.42, T-Pは0.58, CODは0.48と低かった.そこで, 説明変数の宅地面積を人口に変更し, メコン川からの取水が行われている部分流域を区別するダミー変数を導入したところ, p値はT-Nは0.0004, T-Pは0.0000, CODは0.0000であり, 決定係数R2は, T-Nは0.71, T-Pは0.87, CODは0.80と大きく改善した.
  • 森 洋, 田中 忠次
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 205-209,a3
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地すべり等の安定指標で古くから検討されてきたc-tanφ 図を利用した設計手法 (逆算法) を考慮した地震時での円弧すべり安定評価手法を, ひずみ軟化モデルを用いた弾塑性有限要素解析で比較・検討した.地震時にひずみ軟化挙動を示す斜面モデルに対して, 従来型の逆算法では, すべり面の位置を一義的に決定することはできない.しかし, 本解析手法はそれらを自動的に算出し, 破壊時付近での限界水平震度や勢断ひずみが局所的に集中してくるすべり面形状を導出することが可能であるため, 地震発生に伴う地盤災害の予測に大きく寄与できる可能性を示した.
  • 森 淳, 水谷 正一, 高橋 順二
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 211-221,a3
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水田生態工学の視点から水田生態系の特徴と近年における変質をレビューした.水田生態系は, 動物の行動範囲や物質フローの特徴から, 広域的にとらえると把握しやすい.空間特性として, モザイク構造であること, 階層構造を持っていること, 水域によるネットワークが形成されていることがあげられる.生産基盤の整備は水田生態系が変質した要因の一つである.事業による環境改変は, 流速, 水深と断面, 底質, 植生など多岐にわたり, 復帰可能な撹乱の程度を越え, カタストロフィックシフトを引き起こした可能性がある.水田生態系の保全は, モデルとなる生態系を設定し, その構造, 機能, 多様性, 動態を模倣するよう, 構造物の物理性の再現が必要である.田園環境整備マスタープランは時間的・空間的モデルとなるよう作成されなければならない.今後, 水田生態系における自然再生を推進すべきである.
  • 原田 茂樹, 北辻 政文
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 223-224,a3
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 渡部 恵司, 森 淳, 竹村 武士, 小出水 規行
    2008 年 2008 巻 254 号 p. 225-226,a3
    発行日: 2008/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業水路における生物生息場の保全上, 流速や底質等の環境因子の多様化が重要と言われる。植生の有無, 種の違いおよび維持管理作業 (植生除去) が流速分布に与える影響と, それらが魚類等の餌となるヨコエビ類の個体数および体長分布に与える影響を明らかにするため, 秋田県駒場北地区の農業水路で調査を行った。水路内に部分的に存在する植生は周囲の流速を多様にし, 構成種の空間構造の違いが群落内の鉛直方向の流速を多様にしていた。植生除去により流速の多様性は減少した。また流速が遅いほどヨコエビ類の個体数は多く, 体長は小さかった。維持管理の際に通水断面を維持しつつ植生を刈り残す部分を設けると, 流速の多様性を維持できるだろう。
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