抄録
本研究は, 農業土木技術的獣害対策手法の開発に向けた基礎的知見の獲得を目的とし, 獣害対策として物理的防除が優先的に選択される地域の獣害発生形態と地域農業特性を明らかにした. これにより, 獣害対策の中でも農業土木技術的対応が比較的容易であると考えられる物理的防除が, より効果的に適用される地域を抽出することが可能となる. 和歌山県を対象地域として, 市町村アンケート結果から獣害対策選択行動による市町村の類型化を行い, クラスター分析等を用いて各類型の獣害発生形態及び地域農業特性指標を分析した結果, 物理的防除が優先的に選択される地域は, 1) イノシシによる被害面積率が高い地域, 2) 耕作放棄地率が高い地域, 3) 一戸当たり経営耕地面積が小規模な地域, に多く見られる傾向を示した.