抄録
低平地水田地区において, 転作田が存在することにより, 隣接する水稲が作付されている圃場の水収支に及ぼす影響および地下水位変化にっいて調査を行った. 灌漑初期の最初の灌水では水田から転作田方向へ地下水が移動する傾向がみられた. 原因として, 転作を5年以上続けることで, 水移動が容易な間隙が増大していることが考えられる. その結果, 灌漑初期の減水深は転作田に隣接する圃場の方が水田に挟まれた圃場より大きくなった. 灌漑普通期では転作田と接する畦畔における漏水管理の成否により減水深に違いが生じた. ただし, 灌漑普通期における減水深は土壌構造の違いに大きく依存し, 営農者の畦畔管理により畦畔浸透抑制が十分に可能な圃場であれば, 転作田の影響はほとんどないことが明らかとなった.