抄録
施工後の年数が経過した暗渠では, 疎水材位置の低下や, 耕転, 代かきによって形成される耕盤により, 排水機能が施工直後より大幅に低下することが問題となっている. 本研究では, 水稲連作田における暗渠排水速度を長期間実測すると同時に, 当該ほ場の乾湿状況, 亀裂の進展, 疎水材の深度を把握し, 暗渠排水能力の季節的・経年的な変化とそのメカニズムを解析した. 暗渠の排水能力は, 代かきや収穫時の踏圧による土壌の撹乱や圧縮, 乾燥収縮による亀裂の発達, 膨潤や目詰まりによる亀裂の閉塞に対応し, 季節的に変動した. また, 疎水材位置の低下やその上部土層の通水性の悪化により, 暗渠の能力は, 経年的に低下することが確認された. また, 施工後年数が経過し, 排水能力が低下した暗渠でも, ほ場を乾燥させることにより亀裂が深部に発達し, 一時的に排水能力は向上するが, 排水が進むと再び悪化することが示唆された.