2021 年 31 巻 1 号 p. 20-30
日本では800以上の機関リポジトリが運用されているが,学術雑誌論文の登録に積極的な機関は一部に限られている.本研究では,機関リポジトリコミュニティに指針を与えることを目的として,学術雑誌論文件数と図書館員によるオープンアクセス推進活動の因果関係を分析した.国内87機関のデータを計量分析した結果,研究者へ直接アプローチする「学術雑誌論文提供依頼」の実施は,学術雑誌論文件数の増加に特に効果的である一方で,「オープンアクセス方針」の策定や「セルフアーカイブ」の実施は,それほど効果的ではないことがわかった.因果関係の詳細を把握するために,「学術雑誌論文提供依頼」に関して追加で収集した4機関のデータからは,その年間成功率の平均は36.32%であり,最も効果的に実施できている機関の平均と最高値は,それぞれ55.82%と73.20%にも及ぶことが明らかになった.