2025 年 35 巻 1 号 p. 47-52
日本でインターネットが社会に普及する以前の短い期間,個人向けのデータ通信サービス−いわゆる「パソコン通信」が人気を集めた.筆者は,1990年代前半に大手のサービスであったNIFTYServeに加入し,比較的アクティブな利用者としてネットワークを通じたコミュニケーションを経験した.この時期の経験は,その後のインターネット社会において,筆者がネットワークを利用しながら,学術的な仕事を進めてゆく上での,基礎を形作っている.本稿ではパソコン通信時代に参加したコミュニティを回想し,あらためて「社会」としてのネットワークを考えるための,多少の手掛かりが提供できればと考える.