本研究の目的は,日本の科学研究を支えてきた科学研究費助成事業に参画する大学教員について,多様化の現状と,それをもたらした外部及び内部要因を分析することにある.具体的には,KAKEN(科学研究費助成事業データベース)の職名情報を用いて,教員の職務や身分の変遷を定量的に分析した.その結果,教育研究以外の職務の追加や役割分担の進展,身分の複雑化が観察された.また,多様化の外部要因として,若手・女性研究者の活躍推進や大学経営の改革を強調する科学技術政策との関連性が確認された.さらに,研究活動の維持を目指す大学側の戦略が,内部要因として職名や身分の複雑化に寄与していることが示唆された.KAKENに含まれる職名情報は,表面的には単なるラベルに見えるが,研究教員の多様化を明らかにする情報資源としての潜在的価値を示している.