論文ID: 2020_034
我々は,プラスチックリサイクルのために工業レベルで高速動作するラマン分光法による識別装置を開発している。現場でのスペクトル解析は多変量解析といった複雑なものでなく,ピーク強度比較といった簡単で高速な方法が要求される。さらに,精度が高く,実使用環境のノイズに対して強靭な結果を与えるピークを選ぶには,分光学の知識や経験が必要となるため普及を妨げている。本論文では,機械学習のサポートベクターマシーン(SVM)を使い,ピーク選択が定量的に行えることを示した。3 種類のプラスチック(PP, PS, ABS)の分類が,ラマンスペクトルに現れた4 個のピークの内の2 個のピーク強度のみで行えることを示し,さらに、4 個のピークの組合せからできる6 組の中から,擬似的に大きなノイズを加えた状況でも高い識別精度を与える1組がSVM により決定できることを明らかにした。種類間の最近接したデータすなわちサポートベクター間のマージンの値の大小によりピーク選択が分光学の深い知識を必要とせず機械的に行えることを示した。