抄録
植物は光合成産物のうちかなりの部分を根からRhizodepositionとして放出することが知られており、個々の化合物については研究例があるもののその全体像については未だ知られていない。本研究室ではイネを用いて植物根分泌物の回収のための無菌水耕系を開発し、播種後16日目(移植後12 日目)まで無菌状態を維持することに成功した。それらの植物から回収された根分泌物について、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)を活用したメタボロミクス的手法により包括的な解析を行ったので報告する。
イネ(Oryza sativa cv. Nipponbare)を+P、-P条件下で水耕栽培し、培養液から根分泌物を回収した。1/10強度のSCD培地により無菌状態を確認した。凍結乾燥サンプルからメタノールにより根分泌物を溶出し、GC-MSにより分析した。重複や不純物を除くとおよそ90のピークが検出され、約半数のピークを同定した。12種類の糖の誘導体が検出されたほか、有機酸やアミノ酸、脂肪酸、アミン類の分泌も確認された。GCのピーク面積に基づいてPCA解析を行ったところ、低リン条件下では糖の分泌が減少し、アミン類、脂肪酸の放出が増加する傾向を示した。現在UPLC-MSを使用し、対象をより多くの物質、特に二次代謝産物にまで広げた分析を進行中である。