2008 年 2008 巻 601 号 p. 601_13-601_32
保険金支払漏れは保険事業が自由化以降抱える本質的な問題が表面化したものである。第一は保険特性の問題である。独占的競争市場における安易な類似商品の開発は,業界全体の商品ブランド価値を低下させ消費者利益を置き去りにする。第二は過度の株主重視経営の問題である。経営目標として過度にROEを追うことは,利益優先による人員削減がもたらすコーポレートガバナンス機能の低下や募集態勢の脆弱化のみならず,縮小均衡経営による純率精度の低下を引き起こす。第三は経営者の意識改革の問題である。金融の自由化が進む中,今後保険業界が健全なる発展を遂げるには,資産が抱えるリスク量の適正な把握と,それに対する負債と資本の適切な管理および効率的な運用を図ることが求められる。
これらの課題を克服するには,「資本コストを意識した経営管理指標の導入」と,それを支える「料率秩序の再構築」が急がれる。