日本関節病学会誌
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原著
上前腸骨棘は骨盤傾斜基準軸として適切か?
―3次元補正されたDRR画像による精度解析―
吉野 宗一郎川原 慎也本村 悟朗濱井 敏池村 聡藤井 政徳中島 康晴原 俊彦中村 哲郎進 悟史馬渡 太郎
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2021 年 40 巻 4 号 p. 347-352

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抄録

目的 : 両上前腸骨棘 (ASIS) を結ぶ線が骨盤傾斜の絶対基準軸とされているが, 両股関節正面X線写真は両涙痕下端などの基準軸で評価される。複数の骨盤基準軸の冠状面・横断面での精度を評価しASISが真に両股関節の正中を規定しうるかを検討した。

方法 : 股関節に関節症変化を伴わない人工膝関節全置換術51例の術前CTを術前計画ソフトに取り込み, 両大腿骨頭中心を結ぶ線 (骨頭基準軸) を骨盤基準と定義した。冠状面について, 人工的な2次元画像であるDRR画像を作成し, (1) ASIS, (2) 涙痕下端, (3) 臼蓋上縁, (4) 閉鎖孔上縁, (5) 閉鎖孔下縁, (6) 坐骨下端を結ぶ軸を定義した。横断面は補正CTスライスで (a) ASIS, 骨頭中心高位での (b) 寛骨臼前縁, (c) 寛骨臼後縁, (d) 坐骨後縁を結ぶ軸を定義した。各軸と骨頭基準軸の誤差を計測した。

結果 : 冠状面ではASISと比較し誤差は臼蓋上縁で有意に小さく, 涙痕下端も小さい傾向であり, 坐骨下端で有意に大きかった。横断面ではASISと比較し誤差は寛骨臼前後縁で有意に小さかった。双方とも骨頭により近い軸で誤差が小さい傾向にあった。

考察 : 骨盤基準を規定する際に, 症例に応じて両上前腸骨棘よりも骨頭レベルにより近い基準軸を参照することが重要と考えられた。

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