日本乳酸菌学会誌
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総説
乳酸菌の新産業創成をめざした戦略的研究
田代 幸寛園元 謙二
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2014 年 25 巻 3 号 p. 155-165

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抄録

『バイオリファイナリー』は再生可能なバイオマスを原料とした有用微生物によるバイオ燃料や化学品の製造に関する技術であり、省エネルギー型・環境調和型プロセスとしてますます脚光を浴びている。適した乳酸菌を選択することにより、様々なバイオマスから乳酸(l-、d-、dl- 体)や酢酸などの有機酸を生産することができる。我々は乳酸菌を用いた乳酸発酵によるバイオマスのカスケード利用を提唱し、乳酸発酵産物から種々の有用物質へ変換する環境調和型新産業体系『Lactate Industry』の実現を目指している。一方、賦存量が大きく安定供給可能なリグノセルロース系バイオマスを発酵原料に利用するには、いくつもの重大な課題を克服しなければならない。これまでに、我々は新奇な優秀乳酸菌のスクリーニング・育種から発酵・培養法の開発、さらには代謝解析等に関する研究を展開してきた。本稿では、リグノセルロース系バイオマスによるバイオリファイナリーの問題点とLactate Industry の実現に向けた戦略を概説するとともに、スーパー乳酸菌Enterococcus mundtii QU 25 を中心とする乳酸発酵に関する研究成果を紹介するとともに、『スマート発酵工学』による今後の展望を述べたい。

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© 2014 日本乳酸菌学会
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