2018 年 29 巻 3 号 p. 152-157
Lactobacillus paracasei K71(K71 株)加熱死菌体の摂取が、脂質代謝、腸内細菌叢へ及ぼす影響を遺伝性肥満マウス(ob/ob マウス)で検討した。AIN-93G 飼料で飼育した野生型群と ob-AIN 群、AIN-93G 飼料に K71 株を添加した ob-K71 群の 3 群を 90 日飼育した。K71 株摂取による体重増加や肝臓の脂質代謝への明らかな影響は見られなかったものの、ob-AIN 群と比較して ob-K71 群において血清 NEFA 濃度の有意な減少が見られた。さらに、肝臓においてインスリン抵抗性に関与すると考えられているセラミドの合成遺伝子である serine palmitoyl transferase(SPT)-1 遺伝子の発現量が ob-K71 群において有意に減少していた。K71 株摂取による腸内細菌叢への影響を解析した結果、K71 株摂取は 2 型糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎で関連が報告されている腸内細菌叢の変動を抑制することが示唆された。本研究により、K71 株摂取は腸内細菌叢に影響を与え、セラミド合成経路を介したインスリン抵抗性の改善作用が示唆された。