2019 年 30 巻 3 号 p. 143-152
受賞研究はオランダへの留学をきっかけに開始し、これまで 20 年間にわたり取組んできた研究成果です。胆汁酸は脂質を乳化して消化吸収を助ける胆汁の主成分で、細胞膜脂質にも作用して殺菌活性を示すので、プロバイオティクスには胆汁酸耐性が要求されます。そこで乳酸菌やビフィズス菌の胆汁酸に対する耐性機構について研究を開始し、次いで殺菌機構を検討しました。これらの研究の多くはエネルギー代謝を解析の視点として行いました。その後両者を融合発展させて胆汁酸が腸内細菌叢を制御する宿主因子であることを発見しました。近年、腸内細菌叢と宿主の健康との関係に注目が集まる中で、胆汁酸の重要性を示したこの研究成果は、高脂肪食摂取による腸内細菌叢の変動とメタボリックシンドローム等の疾病発症との因果関係解明に関する研究に多大な影響を与えています。ここに至るまでの研究の経緯を、本会運営への貢献も含めて紹介します。