日本乳酸菌学会誌
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総説
動きの可視化から紐解くバクテリアの新しい世界
中根 大介西坂 崇之
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2020 年 31 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

生命にとって動きは本質的である。多くのバクテリアは、べん毛という繊維構造を使って水中を自由自在に泳ぐことができる。一方、このような優雅な運動様式を持たずに動き回るものもたくさん存在する。この不思議な生体運動は、多種多様なバクテリアにおいて観察されており、多くの研究者を魅了してきた。しかし、べん毛を使わずに、一体どのようにバクテリアが動くのか、そして推進力を発生する装置は何なのか、こういった点について不明のままであった。ところが、この 10-20 年の間に顕微鏡の可視化技術が発達することで、バクテリア個体やそこに含まれる運動装置の動きや構造を詳細に観察できるようになり、これらの運動メカニズムの理解は飛躍的に進展した。本総説では、「スパイダーマン」のように「糸」の伸縮による動きまわる仕組み、「キャタピラ」のように膜表面の流れを使って這う仕組み、「ドリル戦車」のように高粘性環境を潜りながら動く仕組みなど、バクテリアという小さな生命体が独自に発達させた生体運動様式について解説し、我々が得た最新の知見について紹介する。

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© 2020 日本乳酸菌学会
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