2024 年 35 巻 1 号 p. 41-50
チーズは伝統的な発酵乳製品の一つであり,種類の違いによりそれぞれ特徴的な風味を持つ。この風味の多様性は,凝乳時に人為的に添加されるスターター乳酸菌の違いだけでなく,熟成時に自然発生的に増殖する非スターター微生物の違いが大きな要因の一つとされている。しかし,チーズに存在する非スターター微生物は多様である一方,それら微生物の風味形成に関する能力については培養法に依存した株レベルの検証に留まっている。本総説では,微生物叢解析とメタボローム解析を統合したマルチオミクス解析により両者の関連を検証した我々の研究を紹介し,本手法の有効性とチーズに存在する微生物の風味形成に関する能力について述べる。