日本乳酸菌学会誌
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細菌における脱炭酸反応とエネルギー代謝
乳酸菌を中心に
阿部 敬悦樋口 猛
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2001 年 12 巻 2 号 p. 68-81

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抄録
細菌においては高エネルギーリン酸化合物(ATP) やイオンの濃度勾配(proton motive force [pmf])といった形態の代謝エネルギーが種々の生物反応の維持に用いられる。それら二種のエネルギー形態はFoF1-ATPaseを介して相互に変換可能である。細菌の栄養取り込みは,一般にそれらの代謝エネルギーを消費するものと考えられてきた。しかし,この10年の研究で,細菌において,新たに基質輸送に共役してエネルギーを生成する系の存在が明らかになってきた。それらはアミノ酸や有機酸の輸送と細胞内脱炭酸反応に共役して, pmfを生成するシステムである。本システムは(i) 膜電位を発生させる基質: 脱炭酸産物交換輸送体と(ii)細胞内プロトンを消費する細胞内脱炭酸酵素の二酵素反応系で構成されるプロトンポンプであり, Proton-motivemetaboliccycleと呼ばれる。本システムで発生したpmfは細菌細胞膜のFoF1-ATPaseによりATPに変換される。この系は基質レベルのリン酸化,酸化的リン酸化,光リン酸化に次ぐ,第4のATP生成系として脱炭酸的リン酸化とも呼ばれる。本システムは,発酵生産に利用される種々の細胞に導入可能なバックアップエネルギーシステムとして産業利用が期待される。
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