国語審議会の権能を受け継ぐ文化審議会国語分科会の漢字小委員会から,間もなく「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」が公表される。「木」はハネてはいけない,「令」は下部を「マ」で書いたらバツだといった意識と評価は,主に硬筆の一般化や情報化の進展に伴って強化されたものである。漢字の書き取りテストにおける教員による字形の細部への神経質なまでの正誤判定と評価基準のぶれ,窓口など各種業務における本人確認の際の姓名の同定上のトラブルなど,社会生活における日本語の漢字の字形に関する無用な摩擦が随所で起きている。漢字の表語性という本質に基づき,漢字政策の方針を明確化しようとするこの指針によって,こうした混乱が解消されることが期待される。ここでは,その性質と具体例を紹介し,漢字使用圏(繁体字圏,簡体字圏),非漢字圏の学習者に対する日本語教育への応用についてどうするのがよいかも,ともに考えたい。